証券会社のアンダーライター業務とセリング業務の違いと実務の実態

株式

証券会社の業務にはさまざまな役割がありますが、特に引受業務(アンダーライター業務)と販売業務(セリング業務)の違いを正しく理解することは、金融業界や投資の知識を深めるうえでとても重要です。本記事では、それぞれの業務のリスクの違いや、同一の証券会社内で両方を行う場合の考え方などをわかりやすく解説します。

アンダーライター業務とは:引受によるリスクの存在

アンダーライター業務とは、発行体(例:企業)が新たに発行する株式や債券などの有価証券を、証券会社が一括で引き受ける業務です。証券会社が買い取り、その後市場へ販売します。

この業務では、売れ残った場合に証券会社がその有価証券を抱えることになるため、価格変動によるリスクを伴います。つまり、「売れなければ証券会社が損をする」構造です。

セリング業務とは:販売だけを担う低リスク業務

一方、セリング業務は「販売代理」のような立ち位置で、証券会社が投資家に対して有価証券を販売するだけの業務です。この場合、有価証券の保有リスクを負わず、販売の手数料収入が主な収益源となります。

セリング業務は、引き受けることなく「売るだけ」なので、在庫リスクがありません。そのため、失敗したとしても証券会社の自己資金が損なわれることはありません。

同一の証券会社が両方行うことはあるのか

ここで疑問となるのが、「同じ証券会社がアンダーライターとして引き受け、同時にセラーとしても販売を行うのか?」という点です。結論として、これは非常に一般的な実務です。

大手証券会社は「主幹事」として有価証券を引き受けた上で、自社の営業部門などを通じて投資家へ直接販売も行います。つまり、証券会社内でリスク(引受)と販売(セリング)を同時に担っていることになります。

引受と販売のリスクの整理

同じ証券会社内で「引受」と「販売」を行った場合、証券会社は引受時点でリスクを負っています。そして、そのリスクを低減させるために販売(セリング)を通じて早期に売り切る努力をします。

この場合、販売が成功すれば在庫リスクは消え、証券会社は引受手数料+販売手数料で利益を得ることができます。売れ残れば在庫を保有するリスクが残るため、実質的には「アンダーライター」としてのリスクを軽減するためのセリングであるとも言えます。

なぜ複数の証券会社で分担するのか

新規公開株(IPO)などでは、主幹事証券会社がアンダーライターとなり、他の証券会社を幹事団として販売を依頼することが多いです。これは「販売力の強化」「投資家へのリーチ拡大」「リスクの分散」などを目的としています。

主幹事が自社内だけで販売しきれない量の有価証券を引き受けた場合、他社のセリング力を活用して売り切るための体制が構築されます。

まとめ:アンダーライターとセリングの違いを正しく理解する

証券会社が引受業務を行うときにはリスクが伴いますが、販売業務はそのリスクを軽減する手段のひとつです。同じ証券会社が両方の業務を行うことは矛盾ではなく、実際には効率的かつ戦略的な運用といえます。

証券業務を理解するには、「どこでリスクを負い、どこで収益を得るのか」を軸に見ることが大切です。引受と販売、それぞれの意味を明確にし、実務上の関係性を掴んでおくことで、より深い理解が得られるでしょう。

株式
最後までご覧頂きありがとうございました!もしよろしければシェアして頂けると幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました!もしよろしければシェアして頂けると幸いです。
riekiをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました