かつて日本は「加工貿易型経済」として成長を遂げてきました。これは原材料を輸入し、それを国内で加工して付加価値を高めた製品を輸出することで外貨を稼ぐスタイルでした。しかし近年、多くの日本企業が海外現地工場を展開するようになり、外貨獲得の構造にも大きな変化が見られます。
加工貿易型から「現地生産・現地販売」型へ
現代の日本企業は、製品の製造拠点を海外へ移し、その国の市場で直接販売する「現地生産・現地販売型」へと移行しています。このタイプでは、完成品の輸出による外貨獲得ではなく、現地法人の売上から生まれる利益を配当やロイヤルティなどの形で本社に還流させることが中心となります。
このモデルでは「貿易収支」よりも「所得収支」が重要になります。実際、日本の国際収支統計では、2020年代に入ってからは所得収支の黒字が貿易収支を上回る傾向が強まっています。
この経済モデルの呼び名は?
こうしたスタイルは明確な単語で表されることは少ないですが、経済学的には「直接投資型国際収益モデル」あるいは「多国籍企業型外貨獲得モデル」と表現されることがあります。また、ポスト加工貿易型経済とする表現も一部で使われています。
加えて、貿易そのものではなく、現地の子会社による営業利益や知的財産権の使用料(ライセンス収入)が外貨獲得の主力となる点が、旧来型の加工貿易との決定的な違いです。
実際の企業の例:トヨタとユニクロ
例えばトヨタはアメリカや中国などに多数の生産拠点を持ち、現地市場で直接販売しています。完成車の輸出は全体の一部に過ぎません。ユニクロを展開するファーストリテイリングも、アジアを中心に多数の現地法人を持ち、海外売上比率が年々高まっています。
これらの企業は、日本で生産した製品を輸出するというよりも、海外で稼いだ利益を日本本社に送金する仕組みで経営が成り立っており、これが現代日本経済の特徴の一つになっています。
外貨獲得の柱が「所得収支」になっている現状
国際収支の中で、加工貿易に基づく「モノの輸出入=貿易収支」は以前ほどの比重を持たなくなりました。代わって重要なのが「所得収支」です。これは、海外に持つ資産(株式・債券・現地法人など)からの収益を指し、日本はこの項目で世界最大級の黒字を誇っています。
つまり、今や日本は「製品の輸出」で稼ぐよりも、「海外資産からのリターンで稼ぐ経済」へと変貌したのです。
まとめ
日本はかつて「加工貿易型経済」として世界経済をリードしましたが、現在では「現地生産・現地販売」へと大きくシフトしています。この新たな経済モデルでは、外貨の稼ぎ方が輸出中心から所得中心へと移行しており、「直接投資型経済モデル」とも呼ばれます。
グローバル化が進む中で、こうした動きは日本に限らず世界の主要先進国で共通しており、今後もこの流れは加速することが予想されます。

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