オーストラリアはなぜ政府支出を9.5倍にしてもインフレや通貨暴落が起きなかったのか?日本との違いと財政政策の可能性を考察

経済、景気

政府支出の増加が必ずしもインフレや通貨の暴落につながるとは限らない──。オーストラリアは過去15年で政府支出を約9.5倍に増やしたにもかかわらず、持続的なインフレや豪ドルの急落は起きていません。一方、日本は1.9倍の支出に留まりながらも経済の閉塞感から抜け出せずにいます。本記事では、両国の経済構造や政策の違いを比較しつつ、政府支出と経済成長の関係、そして今後の日本にとっての示唆について深掘りします。

オーストラリアの政府支出増加と経済パフォーマンス

オーストラリアは2007年からの約15年間で、財政支出を大幅に拡大してきました。特にコロナ禍では家計・企業支援に積極的な財政出動を行い、国債発行額も急増しました。それでも、豪ドルは大きく下落せず、インフレ率も概ね目標範囲(2〜3%)にとどまっています。

背景には、強固な資源輸出による貿易黒字や、人口増加を伴う内需拡大、政策の即効性の高さがありました。つまり、政府支出が経済成長に結びつく構造が整っていたと言えます。

日本の政府支出が伸びにくい理由

一方、日本の政府支出は2007年から約1.9倍にとどまっており、歳出拡大に慎重な姿勢が続いています。その理由は、以下のような要因に起因します。

  • 高齢化による社会保障費の固定化
  • デフレマインドと財政健全化目標の優先
  • 国民・政治の財政出動への心理的抵抗

また、支出してもそれが消費や投資に回らず、内部留保や貯蓄に滞留しやすい構造が問題視されています。つまり、日本では支出=即成長にはつながりにくいという点が懸念されているのです。

なぜオーストラリアはインフレや通貨暴落を免れたのか?

以下のような要因が、オーストラリアが財政拡大にも関わらず安定を維持できた背景にあります。

  • 資源国家としての外貨獲得力(鉄鉱石、石炭、天然ガスなど)
  • 人口増による需要拡大(移民政策による労働人口の成長)
  • 中央銀行の迅速な金融政策運用(利上げ・利下げをタイミングよく実施)
  • 民間投資の活性化(インフラや住宅建設など)

つまり、支出が通貨価値や物価に悪影響を及ぼさなかったのは、それを吸収するだけの生産力・需給のバランスが取れていたからといえます。

日本も財政出動で景気回復できるのか?

理論上、日本も財政支出を拡大し、減税や成長投資に振り向ければ、内需を刺激し景気を回復させる余地はあります。特に若年層への負担軽減や、研究開発、起業支援などに重点を置くことで、将来的な税収増にもつながる可能性があります。

ただし、重要なのは「支出の質」です。単なるバラマキではなく、民間の投資や雇用を引き出す施策に集中する必要があります。また、通貨下落や物価急騰リスクを回避するためには、国際信認を維持する制度設計も不可欠です。

財政と通貨の安定は「信認」と「成長期待」で決まる

結局のところ、政府支出の規模よりも重要なのは、その支出が将来的な成長を生むかどうかです。国際市場は、財政赤字よりも「その国の成長力と制度の健全性」を見ています。オーストラリアはその期待に応えられる構造を持っていたため、インフレや通貨不安が起こらなかったのです。

日本にとっても、構造改革と成長戦略を伴う形での財政出動は、十分に経済再生のカギとなり得ます。

まとめ:財政拡大は万能ではないが、成長につながるなら選択肢に

オーストラリアが15年で政府支出を9.5倍にしても深刻なインフレや通貨下落を回避できたのは、経済の構造的な強みと政策運営のバランスが保たれていたからです。日本もまた、慎重な財政姿勢を転換し、成長投資や若年層支援に資金を振り向けることで、閉塞感のある経済を打破できる可能性があります。

ただし、支出は慎重に設計されるべきであり、政治的意思と制度改革が伴って初めて、財政政策はその力を発揮するでしょう。

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