マクロ経済学における現金通貨と預金通貨の比率(現金預金比率)や、法定準備率は、貨幣供給や経済全体に与える影響を理解するための重要な要素です。今回の記事では、現金預金比率が0.2、法定準備率が0.3という条件下で、問題文に挙げられた「銀行の手元保有現金がゼロ」という条件がどのような影響を及ぼすのか、またその計算方法を具体的に解説していきます。
1. 現金預金比率と貨幣乗数の関係
まず、現金預金比率(C/D)とは、通貨のうち現金が占める比率を示します。例えば、現金預金比率が0.2ということは、預金通貨に対して現金が20%を占めることを意味します。この現金預金比率が与える影響は、貨幣乗数に直結します。
貨幣乗数は、銀行が保有する準備金(法定準備金など)を基にして、実際にどれだけの預金通貨が創出されるかを示す指標です。貨幣乗数(m)は、次のように計算されます。
m = 1 / (法定準備率 + 現金預金比率)
この式に基づき、現金預金比率が0.2、法定準備率が0.3の場合、貨幣乗数は1 / (0.3 + 0.2) = 2となります。
2. 銀行の手元保有現金がゼロであることの意味
問題文で「銀行の手元保有現金がゼロである」と記載されていますが、この条件が与える影響について考えてみましょう。銀行の手元保有現金がゼロであれば、銀行は法定準備金を除き、すべての預金を貸し出しやその他の資産運用に回すことができます。
つまり、銀行が実際に保有している現金がゼロである場合、預金通貨の創出能力が最大化され、貨幣供給がより効率的に行われることになります。もし銀行が手元現金を保有している場合、その分だけ貸し出しや預金創出が制限され、貨幣乗数は低下します。
3. ハイパワードマネーの増加がもたらす影響
ハイパワードマネー(H)は、中央銀行が発行する通貨や銀行が保有する準備金などを指します。ハイパワードマネーを10兆円増やすと、貨幣乗数が2であれば、預金通貨はその倍の20兆円増加します。したがって、問題文の「ハイパワードマネーを10兆円増やしたとき、預金通貨は20兆円となる」という選択肢は正解です。
このように、ハイパワードマネーの増加は預金通貨の増加を引き起こし、貨幣供給が拡大する要因となります。特に、銀行が手元現金をゼロにしている場合、預金通貨の創出能力が高まり、貨幣乗数が大きくなることが影響を与えます。
4. 他の選択肢の検証
残りの選択肢も検討してみましょう。
- 選択肢1: 通貨乗数が3となる。
- 選択肢3: ハイパワードマネーを10兆円増やしたとき、現金通貨は8兆円となる。
- 選択肢4: ハイパワードマネーを10兆円増やしたとき、マネーストックは40兆円となる。
- 選択肢5: ハイパワードマネーが200兆円のときのマネーストックは640兆円となる。
これは誤りです。現金預金比率が0.2、法定準備率が0.3の場合、貨幣乗数は2であり、3にはなりません。
現金通貨は直接的にハイパワードマネーの増加によって変動するものではなく、預金通貨に影響を与えるため、これは誤りです。
マネーストックの増加には、現金通貨と預金通貨の両方が関わりますが、単純に10兆円増加したハイパワードマネーがそのまま40兆円に変換されるわけではないため、これは誤りです。
これも誤りです。貨幣乗数を考慮した計算が必要であり、直接的にこの関係は成立しません。
5. まとめ:銀行の手元保有現金がゼロである条件の重要性
問題文の「銀行の手元保有現金がゼロである」という条件は、実際の貨幣創出のメカニズムにおいて重要な役割を果たします。銀行が手元現金を持っていない場合、法定準備金以外の預金はすべて貸し出しに回すことができ、貨幣乗数が最大限に活用されます。
この理解をもとに、ハイパワードマネーの増加が預金通貨にどのように影響を与えるかを考えると、選択肢2が正解であることが確認できます。マクロ経済学の理解を深めるためには、これらの基本的な理論と計算方法をしっかり押さえておくことが重要です。
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