完全競争から不完全競争への移行で生じる資源配分上のロスとは?産業組織論の基礎から丁寧に解説

経済、景気

経済学の中でも産業組織論は、市場構造の違いによって社会全体の効率性や厚生水準がどのように変化するかを分析する分野です。この記事では、完全競争から不完全競争へと市場が移行することで発生する「資源配分上のロス」について、図解を用いずとも明確に理解できるように解説していきます。

完全競争市場と不完全競争市場の違いとは?

完全競争市場では、多数の売り手と買い手が存在し、製品が同質で価格は市場で決定されます。企業は価格受容者(プライステイカー)となり、限界費用(MC)が価格と等しくなる点で生産を行います。

一方、不完全競争市場、特に独占市場では企業は価格設定者(プライスメーカー)となり、自社の利益を最大化するように価格と生産量を決定します。この結果、限界費用よりも高い価格で販売され、社会全体の効率性が損なわれるのです。

資源配分上のロスとは何か?

資源配分上のロス(Deadweight Loss:DWL)とは、市場において本来取引されるべきだった財やサービスが取引されないことで発生する、社会的な損失のことです。

完全競争では価格P=限界費用MCで取引され、消費者と生産者の余剰が最大化されます。しかし不完全競争では、価格がP>MCとなり、取引量が減少します。この失われた取引量が本来享受できた余剰=厚生を奪ってしまうため、それがロスとなります。

具体的な例で考える資源配分のロス

たとえば、A社が唯一の供給者としてある商品の販売価格を自由に決められるとしましょう。消費者の需要は100個分あるにもかかわらず、A社は価格を引き上げることで最大利益が得られる80個しか供給しないとします。

すると残りの20個分は「本来は社会的に有益な取引」であったにもかかわらず実現されず、そこに資源配分上のロスが生まれます。このロスは、消費者と生産者のどちらにも帰属しないため、社会全体の効率が落ちた状態となるのです。

グラフが示すロスの可視化

通常は供給曲線(MC)と需要曲線(D)が交わる点が、完全競争の均衡点です。不完全競争ではこの点よりも左(生産量が少ない)に均衡が設定され、その間に生じる三角形の領域がデッドウェイトロスになります。

この三角形の面積が大きいほど、社会全体の厚生損失は大きいと評価されます。

なぜこのロスが問題なのか?

本来ならば取引されていたはずの財やサービスが取引されないことで、消費者も生産者も損をし、社会全体の厚生水準が低下します。市場が非効率であるという証左であり、政府による規制や独占禁止法の根拠ともなります。

まとめ:資源配分上のロスは市場構造が生む非効率の象徴

完全競争から不完全競争に市場構造が変わると、資源が本来の効率的な配分から外れ、デッドウェイトロスが生じます。これは、産業組織論において非常に重要な概念であり、市場メカニズムの健全性を評価する指標ともいえるでしょう。

試験対策としては、供給・需要曲線を用いた図解と、「P>MC」の状況による非効率性をしっかり説明できることがポイントです。

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