現代貨幣理論(MMT)の中心的な提案である「JGP(Job Guarantee Program=雇用保証プログラム)」には、「労働緩衝在庫」という独特な概念が含まれます。本記事では、その仕組みと目的、賃金抑制との関係、そして現実的な運用について、わかりやすく解説します。
「労働緩衝在庫」とは?
JGPにおける「労働緩衝在庫(Buffer Stock of Labor)」とは、中央政府が雇用の最後の受け皿となり、景気の良し悪しに関わらず誰もが仕事を得られる状態を作るという考え方です。
これは、政府が「失業者」をコストとして放置せず、「最低限の公的雇用」として吸収することで、景気の下支えと社会的安定を図るメカニズムです。
なぜ緩衝在庫という考え方なのか
「緩衝在庫」という言葉は、政府が小麦や米などの物価を安定させるために余剰在庫を確保するのと同じ発想に基づいています。
JGPでは、人間の労働力を在庫のように「貯蔵」し、必要に応じて民間に放出するという比喩で、この制度の柔軟性と経済安定効果を示しています。
JGPは賃金抑制を目的としているのか?
JGPは直接的に賃金抑制を目的としているわけではありません。ただし、インフレ抑制策としての役割があることはMMTの中でも明確にされています。
民間部門が好況になると、JGPから労働者が移行し、民間の需要を満たします。逆に不況時にはJGPが雇用を引き受けるため、完全失業が抑えられ、労働市場が過熱しすぎないよう調整されます。結果として、急激な賃金上昇=インフレ圧力の緩和にもつながります。
実例:JGPのモデルケースと賃金水準
MMTの提唱者であるステファニー・ケルトンやビル・ミッチェルは、JGPの賃金水準は「最低賃金に連動」させることを推奨しています。これは、市場賃金に競合しすぎず、雇用の質を確保するためです。
たとえば、オーストラリアで提案されたJGPモデルでは、最低賃金+福利厚生を提供することで、労働者が民間就職へ移行しやすい「労働リザーブ」として機能する仕組みが構想されました。
労働緩衝在庫の経済的効果
- 景気後退時:民間雇用が減少 → JGPが雇用を吸収 → 失業率抑制
- 景気拡大時:民間が人手不足 → JGPから労働者が移動 → 賃金の暴騰抑制
このように、労働緩衝在庫モデルは「完全雇用を維持しつつ、マクロ経済の安定化装置」として作用します。
まとめ:JGPと労働緩衝在庫は、雇用と物価の安定を両立させる政策
JGPにおける「労働緩衝在庫」は、単なる雇用対策ではなく、失業の代わりに“公的就労”を用いて景気とインフレの安定を図るという革新的な政策設計です。
これにより、「失業者が仕事に戻れない」状況をなくしつつ、インフレ率をコントロールするという、人道性とマクロ経済管理の両立を実現できると期待されています。

こんにちは!利益の管理人です。このブログは投資する人を増やしたいという思いから開設し運営しています。株式投資をメインに分散投資をしています。
コメント