米国企業における取締役の報酬決定プロセスは、日本企業と比較して透明性やガバナンス面で独自の特徴を持っています。特に「報酬は株主総会の前に決まるのか」「その情報はいつ公開されるのか」といった疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、米国企業における報酬決定と株主総会の関係を詳しく解説します。
米国企業における取締役報酬の決定主体
米国では、取締役報酬は原則として報酬委員会(Compensation Committee)が決定します。報酬委員会は社外取締役のみで構成されることが多く、ガバナンスの観点から独立性が重視されます。
この委員会は、毎年の業績評価、同業他社とのベンチマーク、株主利益との整合性などを総合的に検討し、報酬水準や構成(基本報酬・賞与・ストックオプションなど)を決定します。
報酬情報の開示タイミングと内容
米国の上場企業は、DEF 14A(プロキシステートメント)という文書を通じて、株主総会の約1〜2ヶ月前に詳細な報酬情報を開示します。この中には、次年度の報酬方針、業績連動報酬の算定基準、過去実績との比較、株主提案への対応などが含まれます。
つまり、株主総会の前に、報酬方針はすでに策定・開示されており、株主はその内容を見た上で議決権を行使します。
Say on Pay(報酬への意見表明)制度とは
米国では、株主が取締役報酬に対して賛否を表明できる制度として「Say on Pay」が導入されています。この制度は法律上の義務ではなくアドバイザリー(助言的)な投票ですが、反対票が多かった場合には企業側が説明責任を求められ、再検討が促されることもあります。
この仕組みにより、報酬委員会による一方的な決定を防ぎ、株主との対話を重視する仕組みが整っています。
取締役選任と報酬適用の関係
株主総会では取締役の選任も行われますが、その前に報酬方針は提示されており、「この条件で報酬が支払われる」ことを株主に周知したうえで、選任の可否が決まります。
仮に総会で取締役が交代した場合でも、報酬方針の中には新任者や交代時の規定(例:初年度報酬・退任時報酬)が含まれていることが一般的です。
実例:Apple社のプロキシステートメントより
Apple Inc.の2024年版プロキシステートメントでは、ティム・クックCEOの報酬構成が事前に詳細に開示されており、基本報酬・株式報酬・インセンティブの基準も含めて株主に伝えられました。
これに対し株主はSay on Payにて意見を表明し、その内容に大きな反対があれば、Appleは次年度報酬構成の見直しを検討せざるを得なくなります。
まとめ
米国企業では、取締役報酬は株主総会の前に報酬委員会によって決定・開示され、株主はその情報をもとに取締役の選任やSay on Payの投票を行います。
株主総会後にその報酬が正式に適用されるという流れであり、透明性の高いプロセスが求められるのが特徴です。報酬と株主の監視機能が密接に結びついていることが、米国企業のガバナンスの特徴といえるでしょう。

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