「今の円安は行き過ぎだ」といった意見を耳にすることがありますが、その判断は一体何を根拠にされているのでしょうか?為替レートは常に変動しており、単純に過去と比べても意味がないという考えも一理あります。しかし、経済指標や購買力、貿易収支など様々な要素が複雑に絡み合って、現在の水準が「円安すぎる」と見なされているのです。
為替の「適正水準」はどうやって判断されるのか?
為替レートの適正水準を判断するために、多くの専門家が使うのが「購買力平価(PPP)」です。これは、各国で同じ商品がどれだけの通貨で買えるかを基にして、理論的な為替水準を示します。たとえば、同じハンバーガーがアメリカでは5ドル、日本では800円だとしたら、適正な為替は1ドル=160円ということになります。
実際には物価や賃金の変化を考慮しながら計算されますが、2024年時点では購買力平価に対して円が30〜40%程度過小評価されているという分析もあります。
過去との比較は本当に意味がないのか?
「過去は過去、今は今」とする意見も理解できますが、為替市場では過去の水準が重要な参考指標として使われます。なぜなら、為替は国際投資家の期待や心理に大きく影響される市場であり、過去の水準と比較して「割安」「割高」と判断することが投資判断の基礎となっているからです。
たとえば、過去30年間のドル円の平均レートは約110円前後で推移してきました。それに対して現在の150円台という水準は、過去との比較において「異常」と見なされることがあります。
金利差の拡大が円安を加速させている
最近の急激な円安は、日米の金利差が拡大したことが一因です。アメリカはインフレ抑制のために積極的な利上げを行ってきましたが、日本は低金利政策を維持しています。この差によって、投資家はより高い利回りが得られるドル資産へ資金を移動させ、結果として円が売られる構図が生まれます。
実例として、2022年から2024年にかけてFRB(米連邦準備制度)が5%以上の政策金利に達する一方で、日本はゼロ金利に近い状態を維持しており、この金利差が円安を加速させたとされています。
日本経済にとっての「円安すぎる」の意味とは?
円安が進めば輸出企業は利益を上げやすくなる一方で、輸入品の価格が高騰し、国民の生活費が圧迫されます。とくに原材料やエネルギーを輸入に頼る日本では、円安がインフレ要因となり家計への打撃が大きくなります。
また、海外旅行や海外留学、外国製品の購入が割高になるため、一般消費者にとって「円安すぎる」と感じる実感は強くなります。
「今は今」とはいえ、経済の本質的なバランスは変わらない
「今は今」という見方は、為替レートの変動に過剰反応せずに、現在の環境に適応しようとする前向きな態度と言えます。しかし、通貨の価値は国の経済力・信用力・金利など、経済的な要素の上に成り立っています。そうしたバランスを無視して為替を語ることはできません。
実際には、「今は今」でも「なぜこうなったか」を知ることが、経済の本質を理解する手がかりになります。
まとめ:円安の是非を考えるには複合的な視点が必要
「今は円安すぎる」と言われる背景には、購買力平価や過去の為替水準、金利差、貿易収支といった経済的な根拠があります。単なる感覚ではなく、データや指標に基づいた判断がなされているのです。
過去と比較することには意味がありますが、それに固執するのではなく、現在の国際情勢や経済の構造的な変化も含めて、多角的に見ていく姿勢が求められます。

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