かつて日本では「デフレ脱却」のために物価上昇が望ましいとされてきましたが、最近では逆に「物価高が家計を圧迫して困る」という声が目立つようになりました。このギャップには経済の構造やインフレの種類に関する理解のズレが背景にあります。
インフレ目標と実際の物価上昇は何が違う?
日本銀行が掲げていた2%のインフレ目標は「安定的で健全な経済成長」のための物価上昇を意味していました。これは需要の拡大や賃金の上昇を伴う「良いインフレ(デマンド・プル型)」です。
一方、現在の物価高は「輸入コストの増加」や「原材料高騰」によるコストプッシュ型インフレが中心です。これは賃金が上がらない中での物価上昇であり、家計にとってはマイナスの影響が大きいのです。
なぜ以前は物価上昇が歓迎されていたのか?
長年デフレに苦しんでいた日本経済では、物価が上がらないことが企業の利益減少や賃金停滞に繋がっていました。物価が「適度に」上がることで、企業の収益が改善され、雇用や所得の増加が期待されていたのです。
2013年のアベノミクス政策以降、日本銀行は2%のインフレ目標を掲げ、量的緩和や低金利政策で市場に資金を供給し続けてきました。
なぜ今は物価高が問題なのか?
2022年以降の急激な物価高の主な原因は、ウクライナ戦争や円安などの外的要因による輸入価格の上昇です。例えば、エネルギー価格や食料品の値上げが顕著で、庶民の生活を直撃しています。
さらに、企業側もコスト増を価格に転嫁せざるを得ないため、生活必需品までもが連続して値上がりしていますが、賃金上昇が追いつかないため、実質的な購買力が下がっているのです。
インフレ=物価上昇=良いこと、ではない理由
インフレが「良い」とされるのは、給与や経済全体がバランスよく成長している場合に限られます。日本のように実質賃金が下がっている状況での物価上昇は、むしろ消費を冷え込ませ、経済全体にもマイナスです。
たとえば、2023年の日本では生鮮食品やエネルギーなどの価格が前年比10%以上上昇しましたが、名目賃金の伸びはそれに追いついていません。
過去の物価上昇との比較:バブル期と現在
バブル期(1980年代末~90年代初頭)は、所得も同時に増えており、物価上昇があっても生活水準は維持できていました。しかし、現在のような実質賃金のマイナス下でのインフレは、単に「生活が苦しくなるだけの物価高」です。
したがって、同じ「物価上昇」でも、背景や影響がまったく異なるという点を理解しておくことが重要です。
まとめ:なぜ「物価が上がってよかった」が「物価が上がって困る」に変わったのか
・インフレ目標は、賃金や経済成長とセットの「良いインフレ」を想定したもの
・現在の物価高は、外的要因による「悪いインフレ(コストプッシュ型)」
・実質賃金が伸び悩む中では、物価上昇は生活を圧迫し問題視されるのは当然
・政策的な「物価上昇歓迎」と現実の「家計の苦しさ」は異なるレイヤーの問題
このように、「物価が上がって良い」とされていた背景と、現在問題視されている物価高とは、性質も影響もまったく異なることを理解することが大切です。

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