経済学のIS-LM分析において、政策の効果を判断する上で重要な指標の一つに「貨幣需要の利子弾力性」があります。この値が小さい場合、なぜ金融緩和政策の効果が薄れ、拡張的財政政策の効果が大きくなるのでしょうか?この記事ではその理論背景と実例を交えながら、分かりやすく解説します。
貨幣需要の利子弾力性とは?
貨幣需要の利子弾力性とは、利子率の変化に対して人々の貨幣需要がどれだけ反応するかを示す指標です。利子率が下がったときに、どれくらい人々が貨幣を多く持とうとするか、という感度を表しています。
たとえば、利子率が1%下がっただけで多くの人が現金を持ちたくなるなら利子弾力性は「高い」、あまり変わらないなら「低い(小さい)」と判断されます。
LM曲線と利子弾力性の関係
LM曲線は、貨幣市場の均衡を示す曲線であり、貨幣需要の利子弾力性によって傾きが決まります。利子弾力性が小さい場合、LM曲線は急傾斜になります。
これは、利子率が下がっても人々の貨幣需要がそれほど増えないため、貨幣供給の増加(金融緩和)によって利子率があまり動かず、結果的に投資やGDPが大きく変化しないという現象を意味します。
金融緩和政策が効きにくい理由
利子弾力性が小さいと、中央銀行が市場に資金を供給しても(LM曲線が急なため)、利子率が下がりにくくなります。つまり、企業の投資行動が刺激されず、GDPもほとんど増えないという結果になります。
例えるなら、アクセルを踏んでもエンジンがうまく回らず、車が進まない状態です。これが「金融政策の限界」の一つであり、特に低金利下ではしばしば問題になります。
一方で拡張的財政政策はなぜ効くのか?
財政政策、つまり政府支出の増加や減税による需要創出は、IS曲線を右にシフトさせます。このとき、LM曲線が急であれば、利子率は大きく上昇せず、クラウディングアウト(民間投資の押し出し)が起こりにくくなるため、財政政策の効果はより強くGDPに反映されます。
たとえば、利子弾力性が大きい(LM曲線がフラット)場合、財政支出を増やすと利子率が大きく上がり、民間投資が減ってしまう現象が起きますが、弾力性が小さいならその心配が少ないということです。
図でイメージするIS-LMモデルの変化
イメージとしては次の通りです。
利子弾力性の大きさ | LM曲線の傾き | 金融政策の効果 | 財政政策の効果 |
---|---|---|---|
小さい | 急(垂直に近い) | 小さい | 大きい |
大きい | 緩やか(水平に近い) | 大きい | 小さい(クラウディングアウト発生) |
このように、貨幣需要の利子弾力性は政策の選択において非常に重要な視点となります。
まとめ:利子弾力性が小さいときは「財政」で攻めるのが効果的
貨幣需要の利子弾力性が小さい状況では、金融緩和政策は利子率を下げにくく、経済を刺激する効果が限定的になります。一方で、拡張的財政政策はクラウディングアウトを招きにくく、よりダイレクトに有効需要を押し上げる効果が期待されます。
このような理論を踏まえると、経済の状況に応じて金融と財政の使い分けが重要であることが理解できるでしょう。

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