経済学では、生産活動にともなう外部不経済(例:公害や騒音など)を考慮することが重要です。特に「生産者が限界外部費用を完全に補償する」という仮定のもとで、均衡取引量や総生産費用の変化を理解することは、環境経済学や公共経済学の基礎にも関わります。本記事では、限界私的費用(PMC)と限界社会的費用(SMC)の関係を軸に、外部費用が考慮された場合の総生産費用について詳しく解説します。
限界私的費用(PMC)と限界社会的費用(SMC)の違い
まず、限界私的費用(Private Marginal Cost, PMC)とは、生産者が直接負担する費用を意味します。これには原材料費、人件費、エネルギーコストなどが含まれます。
一方で、限界外部費用(Marginal External Cost, MEC)は、第三者が負担する社会的なコストであり、公害・健康被害などが該当します。この2つを合計したものが、限界社会的費用(Social Marginal Cost, SMC)= PMC + MEC です。
仮想的な補償前提下の均衡とは
「生産者がMECを完全に補償する」と仮定した場合、その生産者にとって実質的な限界費用はSMCとなります。このときの均衡取引量は、社会的に望ましい量(効率的な量)と一致する点で決定されます。
結果として、市場における均衡価格は上昇し、生産量は外部費用が無視されていたときよりも減少します。これは過剰生産を抑制し、社会全体の最適化を図る効果があります。
このときの総生産費用に含まれるもの
この仮想的な均衡点における総生産費用は、PMCによる通常の生産費用に加えて、MECに該当する外部費用を「補償費用」として加えた合計値になります。
つまり、総生産費用 = PMC × 生産量 + MEC × 生産量 のように、限界費用の面積(費用曲線と生産量の積分)で表現されるトータルコストに外部性を内部化した金額が加わります。
実例:工場排水と補償費用のモデル
例えば、ある工場が1トンの製品を生産するごとに200円の私的費用(PMC)と、近隣河川の水質汚染に対して平均50円の外部損害(MEC)を与えていたとします。
このとき、生産者が外部費用を補償する制度(例:課税や賠償義務)が導入されると、1トンあたりのコストは合計250円(SMC)となり、その費用を反映した価格設定が求められます。
環境政策と経済学的含意
この仮定は現実的には理想状態ですが、環境税(ピグー税)や排出権制度などを通じて、現実の経済活動にも近づける試みがなされています。
経済学的には、外部性を内部化することで市場の失敗を是正し、パレート効率的な資源配分を目指すことが重視されます。
まとめ:総生産費用に外部費用は含まれるのか?
結論として、「生産者が限界外部費用を完全に補償する仮定」のもとでは、総生産費用には外部費用も含まれていると考えるのが正解です。
つまり、PMCによる通常の生産費用だけでなく、外部性に対する補償的費用(MEC)も加味されたものが、制度的にも経済的にも妥当な「総生産費用」となります。

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