MMT(現代貨幣理論)とは?基礎からわかる新しい経済の考え方

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近年、経済政策の新たな潮流として注目を集めているのが「MMT(現代貨幣理論)」です。従来の財政赤字に対する考え方を覆すこの理論は、政府の通貨発行権に着目し、経済運営の新しい可能性を提示しています。本記事では、MMTの基本的な考え方からそのメリット・デメリット、実際の適用例までをわかりやすく解説します。

MMTとは何か?

MMT(Modern Monetary Theory)とは、「自国通貨を発行できる政府は、インフレにならない限り、財政赤字を拡大しても問題ない」とする経済理論です。従来の「財政赤字=悪」という常識とは異なり、政府は自国通貨を発行することで、財政支出を拡大し、経済を活性化できると主張します。

この理論は、アメリカの経済学者ステファニー・ケルトン氏らによって提唱され、近年ではアメリカの政治家アレクサンドリア・オカシオ=コルテス氏が支持を表明したことで注目を集めました。

MMTの主な主張

  • 政府は自国通貨を発行できるため、財政赤字を拡大してもデフォルトのリスクはない。
  • 税金は財源ではなく、インフレ抑制や所得再分配の手段である。
  • 完全雇用を実現するために、政府は積極的な財政支出を行うべきである。

これらの主張は、従来の経済学とは異なる視点を提供し、特にデフレや経済停滞に悩む国々にとって魅力的な選択肢となっています。

MMTのメリット

MMTを採用することで、以下のようなメリットが期待されます。

  • インフラ整備の拡大:政府が積極的に財政支出を行うことで、道路や橋などのインフラ整備が進み、経済の基盤が強化されます。
  • 社会保障の充実:医療や教育、年金などの社会保障制度に十分な資金を投入でき、国民の生活の質が向上します。
  • 雇用の増加:政府が雇用保証プログラムを実施することで、失業率の低下が期待されます。

これらの効果により、経済の安定と成長が促進されると考えられています。

MMTのデメリットと批判

一方で、MMTには以下のようなデメリットや批判も存在します。

  • ハイパーインフレのリスク:過度な財政支出がインフレを引き起こし、物価の急騰につながる可能性があります。
  • 政策のコントロールの難しさ:インフレを抑制するための増税や支出削減が政治的に困難な場合、経済の安定が損なわれる恐れがあります。
  • 政治的利用の懸念:政府が財政支出を拡大することが、選挙対策や特定の利益団体への便宜供与に利用されるリスクがあります。

これらの点を踏まえ、MMTの採用には慎重な検討が必要とされています。

MMTの実際の適用例

MMTの考え方に近い政策を実施している国として、日本が挙げられます。日本は長年にわたり、低金利政策と大規模な財政支出を続けており、GDP比で見た政府債務残高は先進国の中でも突出しています。しかし、インフレ率は低く、金利も安定していることから、MMTの理論を裏付ける例として注目されています。

一方で、スリランカでは政府が財政赤字を拡大しすぎた結果、インフレが急激に進行し、経済危機に陥った例もあります。このように、MMTの適用には国の経済状況や政策運営能力が大きく影響することがわかります。

まとめ

MMT(現代貨幣理論)は、政府の通貨発行権に着目し、財政赤字を積極的に活用することで経済を活性化しようとする新しい経済理論です。インフラ整備や社会保障の充実、雇用の増加などのメリットが期待される一方で、インフレのリスクや政策運営の難しさといったデメリットも存在します。

実際の適用例としては、日本がMMTに近い政策を実施しているとされますが、その効果やリスクについては引き続き議論が続いています。MMTの採用には、国の経済状況や政策運営能力を踏まえた慎重な判断が求められます。

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