物価が上昇しているインフレ局面で「減税」を行うことは、一見すると景気刺激策に思えますが、その裏には通貨の価値やマクロ経済に大きな影響を及ぼすリスクが潜んでいます。本記事では、インフレ下における減税の影響について、理論的背景と実際の国際事例をもとに考察します。
インフレとは何か?現金の価値が下がる現象
インフレとは、物価が継続的に上昇し、相対的にお金の価値が下がる現象です。これは通貨の流通量が過剰になることで需要が供給を上回り、価格が上がることから発生します。
たとえば、1,000円で買えていた食料品が1,200円に上がれば、実質的にお金の「購買力」が減ったことになります。こうした状況で消費が加速すれば、インフレがさらに進行する可能性があります。
減税は通貨の流通量を増やす政策
減税は消費者や企業の手元に残るお金を増やすことで、支出を促す経済政策です。家計の可処分所得が増えれば、消費が増加し、企業活動も活発になります。
ただし、インフレ下での減税は「総需要の過剰な拡大」につながりやすく、さらなる物価上昇を引き起こすリスクも伴います。特に供給制約がある場合、需給ギャップが広がり、インフレ圧力が高まるのです。
イギリス・トラス政権の事例に見る政策の失敗
2022年、イギリスのリズ・トラス政権は、エネルギー価格高騰などによるインフレ下で大型減税を打ち出しました。法人税の引き下げ、所得税の緊急減税などが盛り込まれた政策パッケージは、財政規律を無視したものとして市場の信頼を失い、ポンド暴落や国債利回りの急騰を引き起こしました。
このケースでは、「減税=景気回復」ではなく、「減税=経済混乱」となった代表例として語られています。財源なき減税がいかに危険かを示した事例です。
日本で同様の事態は起こるのか?
日本でもエネルギーや食料価格の高騰を背景にインフレが進んでいます。もしこのタイミングで大規模な減税が実施されれば、消費者の購買力は増し、インフレ圧力はさらに強まる可能性があります。
また、日本は国債残高が多く、財政余力にも限界があるため、減税による歳入減が財政不安を招くリスクも無視できません。通貨の信用や金利にも影響が及ぶ可能性があります。
減税政策が有効になる条件とは
減税が効果的なのは、景気が低迷しデフレ傾向があるときや、供給が追いついており、需要刺激がインフレを招かない局面です。過去の日本では消費税率引き下げによって一時的に個人消費を下支えしたことがあります。
したがって、インフレ下での減税は非常に慎重に設計されるべきであり、的確な時期と規模、財源とのバランスが求められます。
まとめ:インフレ下での減税は慎重に
減税は経済活性化の有力な手段ですが、インフレ局面では需給バランスを崩し、通貨安やさらなる物価高騰を引き起こす危険も孕んでいます。
イギリスのトラス政権のように、市場の信頼を失った減税はかえって経済の混乱を招きます。日本においても、今後の経済動向と物価情勢を冷静に見極めたうえで、減税の是非を慎重に判断することが求められています。

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