「ドルが基軸通貨であることでアメリカが得をしている」という言葉は、経済ニュースや専門家のコラムでよく耳にしますが、その実態はやや難解です。本記事では、毎日新聞の岩井克人氏のコラムをベースに、米ドルの国際的な役割とそれがアメリカ経済に与える影響について、具体例を交えてやさしく解説します。
そもそも「基軸通貨」とは?
「基軸通貨」とは、世界中で通用する主要な通貨のことで、特に国際貿易や資産保有の際に使われる割合が高い通貨を指します。現在の基軸通貨はアメリカのドル(USD)です。
例えば、日本とサウジアラビアが貿易をする際、両国の通貨ではなく「ドル」を使って決済することが一般的です。つまり、米国が関係ない取引にもドルが使われているのです。
ドルが世界中で使われることで何が起きるのか?
ドルが基軸通貨として流通していることで、米国は「ドルを印刷するだけで」他国の商品を買うことが可能になります。つまり、物理的な生産や輸出をせずとも、ドル紙幣を発行するだけでモノが手に入る構造が生まれているのです。
例えば、米国が100ドル紙幣を印刷し、それが日本や中国などの輸入代金として使われた場合、そのドルは海外で使われ続け、アメリカには戻ってきません。これは米国にとって「商品を買ったのに、実質的に支払いをしていない」のと同じ効果になります。
なぜ「大もうけ」なのに貿易赤字に見えるのか
このように海外にドルが流出して、輸入が増えると、国際収支の「貿易収支」では「輸入超過=貿易赤字」として記録されます。しかし実際には、アメリカがドルを発行しただけで他国の商品を得ているため、財やサービスを提供せずに利益を得ている、つまり「大もうけ」しているわけです。
実際にモノを生産せずに、ドルを供給するだけで経済的な対価を得ている点が、岩井氏の「まさに大もうけ」という表現の背景にあります。
ドルが米国に戻らないとはどういう意味?
世界の通貨としてのドルは、各国の中央銀行や企業が「外貨準備」や「取引決済」のために保有し続けます。IMFによれば、全世界の外貨準備のうち約6割がドル建て資産です。つまり、米国が発行したドルの大半は「戻らずに」世界を巡って流通し続けるのです。
その結果、米国はドルを供給するだけで世界中から商品を買える立場にあり、「自国製品を売らずに他国製品を買える」という不均衡な恩恵を受けていることになります。
実例で考える:他国と米国の違い
例えば、日本が海外から原材料を買う場合は、必ず何らかの形で円をドルに交換してから支払います。ドルの需要が常にあるため、日本はドルを得るために輸出などの経済活動をしなければなりません。
しかし米国は、ドルを印刷する(=通貨供給する)だけで他国から輸入できるため、自国の産業構造にかかわらず、一定の購買力を維持できてしまうのです。
まとめ:基軸通貨の「特権」を理解しよう
ドルが基軸通貨であることで、アメリカは次のような経済的特権を持っています。
- 世界中で通用する通貨を自国で発行できる
- 輸入に必要な資金を「発行するだけ」で調達できる
- 貿易赤字に見えても、実は得をしている
この特権は、経済的には非常に有利な構造であり、米国が世界の金融市場で中心的な地位を維持できる理由でもあります。岩井氏のコラムは、その「見かけ上の赤字の裏にある利益構造」を鋭く突いているのです。

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