株式投資における特定口座は、税金の自動計算や確定申告不要といったメリットがある一方で、実際の取引と損益表示にズレが生じるケースもあります。特に、信用取引を絡めた複数回の売買では注意が必要です。この記事では、信用買い・現引・現物売却といった一連の流れにおける実現損益の見方や税務処理の仕組みについて、初心者にもわかりやすく解説します。
特定口座の損益計算は「移動平均法」
特定口座(源泉徴収あり)では、損益の計算は「移動平均法」で行われます。つまり、複数の取得価格が平均化されて計算されるため、同じ銘柄を何度も取引した場合、実際の売買順序とは異なる損益結果になることがあります。
たとえば、以下のような取引を行ったとします。
- 信用買い:100株@1,000円
- 現引:100株@1,000円
- 現物売却:100株@1,100円
- 現物買い:100株@1,050円
- 現物売却:100株@1,000円
このような場合、移動平均で計算されるため、「1,000円→1,050円→平均1,025円」の取得単価になり、1,000円で売却した2回目の取引では25円の損失として計上されます。
信用取引と現引の税務上の取扱い
信用取引で買った株を現引きすると、「新たに現物を取得した」扱いになり、取得価格は信用買い時の価格+手数料等が加味された金額になります。そのため、現引きを経由して売却しても、帳簿上は通常の現物売買として処理されます。
ただし、証券会社によっては現引した日と売却した日を同一日にしておくことで、意図的に損益を調整しようとするケースもあるため注意が必要です。税務署から否認されるリスクもあるので、恣意的な取引は避けるべきです。
実現損益がマイナスになった理由
今回のように「安く買って高く売った」のに損益がマイナスになる場合、移動平均での取得価格が売値を上回っている可能性があります。とくに信用→現引→現物売却と現物買い→現物売却を短期間に行った場合、平均取得価格が上がってしまうことが原因です。
そのため、取引の実態と証券口座に表示される損益結果にズレが生じることがありますが、確定申告上はその表示に基づいて課税が行われるため、税務上も損失とみなされる可能性が高くなります。
実際の損益と表示損益がズレることの対処法
特定口座を使っている場合、証券会社が税金を自動で計算・納付してくれますが、表示されている損益が正確な取引履歴を反映していないこともあります。このような場合、以下のような対応が考えられます。
- 証券会社の取引履歴をエクセルなどに記録し、個別の売買ごとの損益を自分で検証する
- 不明点があれば証券会社に直接問い合わせる
- 確定申告を行う場合は、取引明細書を税理士に渡して確認してもらう
表示損益と実感とのギャップは、特に短期売買を繰り返していると起きやすいため、しっかり把握しておくことが大切です。
まとめ
信用取引や現引きを含む複雑な売買を特定口座で行うと、移動平均法により実際の取引よりも不利な損益結果が表示されることがあります。表示された実現損益が税金の基準となるため、意図しないマイナスが出ることもあり得ます。今回のようなケースでは「取引方法が悪い」というよりも、「制度の仕組みを理解しておくこと」が求められます。

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