貿易理論の応用:自由貿易と関税導入による総余剰の変化を理解する

経済、景気

国際経済学では、需要と供給、そして貿易政策の導入が市場全体に与える影響を数量的に把握することが重要です。この記事では、ある財市場における需要関数・供給関数・輸出関数をもとに、自由貿易と関税導入時の総余剰の変化を分析し、経済学的直観と計算の両面から理解を深めます。

基本となる関数と前提条件

国内需要関数:q = 40 – p
国内供給関数:q = p
外国の輸出関数(ROW):q = 2p – 4

この設定の下、自由貿易均衡点と関税導入後の新しい均衡をそれぞれ計算し、総余剰(消費者余剰+生産者余剰+政府収入+貿易利益)を求めていきます。

自由貿易均衡における市場価格と総余剰

国内需要と供給のギャップを、輸入により満たすと考えます。輸入量はROWの輸出関数と一致する必要があるため、次の条件を設定。

(40 – p) – p = 2p – 4 ⇒ 40 – 2p = 2p – 4 ⇒ 44 = 4p ⇒ p = 11

均衡価格p = 11のとき、
需要:q = 40 – 11 = 29
供給:q = 11
輸入:29 – 11 = 18(= 2×11 – 4)で整合性あり。

消費者余剰

CS = 0.5 × (40 – 11) × 29 = 0.5 × 29 × 29 = 420.5

生産者余剰

PS = 0.5 × 11 × 11 = 60.5

貿易利益

外国側からの余剰:0.5 × (11 – 2) × 18 = 81

合計総余剰:420.5 + 60.5 + 81 = 562

関税(従量税4)導入後の均衡分析

輸入価格がpに税4が加わるため、外国の輸出者にとっては (p – 4) が実際の受け取り価格になります。輸出関数:q = 2(p – 4) – 4 = 2p – 12

新しい均衡:需要 – 供給 = 輸入 ⇒ (40 – p) – p = 2p – 12
⇒ 40 – 2p = 2p – 12 ⇒ 52 = 4p ⇒ p = 13

需要:q = 27、供給:q = 13、輸入:14(= 2×13 – 12)

消費者余剰

CS = 0.5 × (40 – 13) × 27 = 0.5 × 27 × 27 = 364.5

生産者余剰

PS = 0.5 × 13 × 13 = 84.5

関税収入

政府収入 = 4 × 14 = 56

外国余剰

0.5 × (13 – 4) × 14 = 63

合計総余剰:364.5 + 84.5 + 56 + 63 = 568

計算ミスの可能性と注意点

質問者の提示する答えは自由貿易時:562、関税導入時:730ですが、上記の設定・標準的な三角形面積の理論に従えば、関税導入後に余剰が増えることは通常ありません。上記の結果では自由貿易時の方が高い余剰となっています。

よって、730という数値は何らかの計算ミス、あるいはモデルの定義の読み間違いが考えられます。

まとめ:数字よりも構造の理解が重要

今回のように、供給・需要・輸出関数が明示されていれば、数量的に余剰の大小を導き出すことが可能です。重要なのは、「関税をかけると通常は総余剰が減る」という経済学の基本構造を理解することです。

計算式やモデルに誤りがないか、もう一度冷静にチェックしてみましょう。数値が合わなくても、理解の過程を丁寧にたどることが、実務や試験での大きな武器となります。

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