金利上昇で地銀は破綻するのか?日本国債の評価と簿価の仕組みを徹底解説

経済、景気

近年、インフレ圧力の高まりとともに金利の上昇が注目を集めています。特に日本の地銀(地方銀行)は多額の日本国債を保有しており、金利が上昇することでその資産価値が下落するリスクに晒されています。では、実際に地銀が破綻する可能性があるのか、簿価と時価の違いを中心に詳しく解説します。

地銀が保有する日本国債のリスクとは?

多くの地銀は、運用先が限られているため、日本国債を多く保有しています。日本国債は信用度が高く、安全資産とされる一方で、金利が上がると債券価格が下がるという性質があります。

たとえば、1%の固定利回りの国債を持っていて市場金利が2%になれば、旧債券の価値は市場で相対的に下がります。これが「時価評価での損失」です。

簿価と時価の違いが銀行経営に与える影響

銀行は、保有する債券を「満期保有目的」として分類している場合、その資産は簿価(購入時の価格)で評価されます。つまり、売却しない限り、たとえ時価が下がっても帳簿上の評価には影響を及ぼしません。

一方で「売買目的有価証券」や「その他有価証券」として扱われる場合は、四半期ごとに時価で評価しなければならず、評価損が発生します。

評価損が与える経営上のプレッシャー

たとえ満期保有であっても、投資家や監査法人、金融庁は地銀の資産の健全性を時価でも分析します。時価が大きく下がり、含み損が膨らめば、資本の健全性を疑われ、株価や信用格付けに悪影響が出る恐れがあります。

実際、アメリカのSVB(シリコンバレーバンク)が2023年に破綻した際も、保有債券の時価評価の損失が引き金となったとされ、大きな話題となりました。

売却しない限り破綻には直結しないが…

基本的には国債は満期まで保有すれば額面で償還されます。したがって、時価が下がっても損失は確定しません。つまり、流動性があり売却を急がなければ、地銀はすぐに破綻するわけではありません。

しかし、顧客の預金流出や信用不安などにより、急いで現金化せざるを得ない場合、時価の下落による実損が生じ、最悪の場合は資本不足から経営破綻につながる可能性もゼロではありません。

リスク管理としてのALM(資産負債管理)の重要性

多くの地銀はALM(Asset Liability Management)で金利リスクを管理しています。たとえば、短期の預金と長期の債券の利ザヤや、金利変動シナリオを分析し、ポートフォリオ全体のリスクを制御しています。

近年では、デリバティブを用いて金利ヘッジを行う銀行もあり、単に国債の時価評価だけでリスクを論じるのは早計です。

まとめ:金利上昇で地銀が即座に破綻するとは限らない

金利上昇は地銀のバランスシートにプレッシャーを与える要因であるのは確かです。しかし、多くの国債は満期保有目的であり、売却しない限り評価損は確定しません。加えて、ALMによるリスク分散も進んでいるため、金利上昇=即破綻というわけではありません。

ただし、地銀の健全性を見るには、時価評価の状況や預金流出のリスクなども総合的に判断する必要があります。投資家としては、地銀の決算書やリスク管理体制の開示にも注目しましょう。

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