経済指標や雇用統計の発表前は、相場が大きく動く可能性があるため、ポジションの整理や様子見が推奨される場面です。一方で、「チャートを見ればある程度の方向性が予想できるのでは?」と感じるトレーダーも少なくありません。本記事では、チャート形状から読み取れる可能性と、その限界についてプロの視点で解説します。
チャート形状が示す「底打ち」や「天井圏」
チャートにはパターン認識によるヒントが隠されています。たとえば、「ダブルボトム」「三尊(ヘッドアンドショルダー)」などは相場の反転サインとされ、直前のローソク足の形状や出来高の推移も、心理的な節目を示してくれることがあります。
過去の事例として、米雇用統計発表直前にドル円が115円付近で横ばいとなり、チャート形状が「保ち合い下限での反発型」に見えたことから、上方向へのブレイクを予測したプロトレーダーもいました。実際、そのときの結果が予想を超える内容だったことで、ドル円は大きく上昇しました。
しかし、指標発表は“ノイズ”を超える
ただし、こうしたチャートパターンも、経済指標という「ファンダメンタルズショック」の前には簡単に裏切られます。なぜなら、指標の結果が予想から外れた場合、市場は事前のテクニカル分析よりも「材料」そのものに反応するからです。
特に、サプライズ性の高い米雇用統計やCPI(消費者物価指数)では、直前まで上昇トレンドだった通貨が突然暴落するケースも珍しくありません。これは、アルゴリズム取引や機関投資家の高速売買によって、想定外の動きが加速するためです。
チャートで読めるのは「確率」まで
チャート分析が意味を持たないわけではありません。むしろ、チャートから得られる情報は「事前にどちらにブレイクしやすいか」という確率の参考になります。しかしそれはあくまで「過去の統計上の傾向」であり、絶対ではありません。
例えば、三角持ち合いの末期にあり、上値の抵抗線を抜けかけている場面で経済指標が発表されれば、「上方向に動きやすい」という期待が高まるのは自然です。ただし、指標内容が弱ければそのまま下方向へ急落する可能性もあります。
実例:チャートパターンとファンダが逆に働いたケース
2022年11月、米CPIが予想を下回る結果となり、ドル円は一気に下落しました。このとき、チャート的には明らかな上昇トレンド中でしたが、インフレ鈍化=利上げ減速というロジックが市場を支配し、テクニカルのシグナルは無視されました。
このように、チャートが見せているトレンドは「センチメントの過去」であり、指標結果は「未来のセンチメント」を変えてしまう可能性があるため、過信は禁物です。
発表前にポジションを取るリスク
テクニカルを根拠に発表前にポジションを保有するのは、いわば「コイントスの裏表に大金を賭ける」ようなものです。スリッページや急変動による損切り不能リスクもあり、短期トレーダーほど発表直前のポジション保持は危険です。
一方、中長期投資であれば、発表による一時的なブレを許容できる場合もあります。ただし、それでもロット調整やストップロス設定は慎重に行う必要があります。
まとめ:チャートと指標、両方を“分けて”考える
チャートパターンは、経済指標発表前の値動きを読むうえでヒントにはなりますが、それに頼りすぎるのは危険です。特に重要指標時は、「チャートで方向を予測する」のではなく、「動きが出たら乗る」という発想の転換が求められます。
事前の予想にこだわらず、素早く反応できる柔軟性を持つことが、長くマーケットで生き残るために重要なポイントと言えるでしょう。

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