市場の競争構造を理解することは、業界の成り立ちや企業の戦略、そして規制の背景を読み解くうえで非常に重要です。本記事では、「自動車業界はなぜ寡占に分類され、旧電力会社はなぜ独占に分類されるのか?」という疑問に対して、経済学の視点からわかりやすく解説します。
そもそも「寡占」と「独占」の違いとは?
経済学における市場の分類では、企業数や製品の特徴、参入障壁などによって以下のように分けられます。
- 完全競争市場:多くの企業が同質の商品を売る市場(例:農産物)
- 寡占市場:少数の大企業が市場の大半を占める(例:自動車、携帯通信)
- 独占市場:単一の企業が供給を支配している(例:かつての地域電力会社)
つまり、寡占とは「少数の競争」、独占とは「競争相手がいない状態」と言えます。
自動車業界はなぜ「寡占」なのか
自動車産業は設備投資・研究開発・ブランド構築に膨大な資金と時間が必要なため、自然と大企業しか生き残れない構造になっています。
たとえば日本国内では、トヨタ・ホンダ・日産・マツダ・スズキ・スバル・ダイハツなど、複数の大手メーカーが存在し、それぞれが一定のシェアを持って激しく競争しています。これが「寡占」に分類される理由です。
旧電力会社が「独占」だった理由
戦後の日本において、電力事業は地域ごとに一社が発電・送電・小売を一体で担う「地域独占モデル」が採用されてきました。これは、電力供給がインフラであり、安定供給と設備の重複投資の回避が最優先とされたためです。
その結果、「東京電力」「関西電力」「中部電力」など、地域ごとに一社のみが電気を供給する独占構造が長年続いていました。特定の地域では他の電力会社が参入できない仕組みであったため、競争は存在しませんでした。
市場構造を決める要因とは?
寡占か独占かを分けるポイントは、以下のような要因が影響します。
- 初期投資の規模:参入障壁が高ければ企業数が限定され、寡占や独占になりやすい
- 製品の性質:電力のように代替がきかず安定供給が重要なものは、自然独占が成立しやすい
- 規制の有無:法的に独占が許容されている場合(公益インフラなど)
- 技術革新の速さ:競争が激しい業界ほど新規参入が起きやすく、独占が維持しにくい
つまり、単に「企業が少ないか多いか」だけでなく、経済的・社会的合理性がその構造を形づくっているのです。
電力自由化後はどう変わった?
近年、日本でも電力自由化が進み、2020年には送配電部門が法的分離されました。これにより、新電力(PPS)が市場に参入し、電力の「小売部門」は独占ではなくなっています。
しかし、送配電網自体は依然として地域の大手電力会社が管理しており、「完全な競争市場」とは言い切れない状況が続いています。つまり、旧電力会社の「独占構造」は緩やかに崩れてきているのです。
まとめ|構造は違えど、それぞれに合理性がある
自動車業界は、競争があるものの限られた大手が市場を支配する「寡占」。一方、旧電力会社は地域独占を前提とした「独占」。両者の違いは、製品の性質、社会的インフラか否か、規制の有無といった構造的要因にあります。
市場の背景を知ることで、企業活動の戦略や投資判断にもつながる視点が得られるでしょう。

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