「赤字国債を全面禁止すべきか?」―財政法第4条の原則と実務を読み解く

経済、景気

「国債をすべて返済してしまえば財政は万全になるのではないか」「赤字国債を0円にすればいい」といった議論を耳にすることがあります。本記事では、財政法第4条が定める国債発行の原則、実際に発行されている「特例国債(赤字国債)」の仕組み、そして“赤字国債全面禁止”という政策提案が持つ意味と課題をわかりやすく整理します。

財政法第4条が定める原則と例外

財政法第4条本文は、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」と規定しています。([参照]参照条文(財務省))

ただし、同条但し書きにおいて「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と記されています。これは、将来世代も受益する可能性のある資本的支出(例えばインフラ整備等)に限って国債発行を認めるという趣旨です。([参照]財務省FAQ:赤字国債と建設国債の違い)

赤字国債(いわゆる特例国債)はなぜ存在するのか

財政法上、歳出を税収等でまかなう原則があるにもかかわらず、実際には多額の赤字国債が発行されています。これは、歳入の不足や景気対策、災害復興など、例外的に歳出を補填する必要が生じたためです。([参照]日本の財政〜赤字国債と財政法)

「赤字国債」とされる国債は、財政法第4条但し書きの建設国債とは目的が異なり、社会保障費や一般歳出の補填など、将来世代の受益と必ずしも整合しない支出に用いられてきたため、批判もあります。([参照]歯止めなき財政規律の緩み)

「赤字国債を0にすれば良い」という提案の検証

この提案には一見合理的な側面があります。「国債を減らす=借金が減る=将来世代の負担軽減」という考え方です。しかし、以下のような課題も併せて検討する必要があります。

  • 歳出削減・増税が不可避:「赤字国債をゼロにする」には、税収を増やすか支出を減らすか、もしくはその両方が必要です。社会保障費や防衛費など削りにくい分野がある中で、歳出を大幅に削ることは国民生活に重大な影響を及ぼす可能性があります。
  • 経済成長や危機対応力の低下:景気後退や災害・パンデミックなどの危機に対して、国債発行という「財政出動の手段」を完全に封じると、政策対応が硬直化する恐れがあります。
  • 条文の「建設国債」枠との関係:財政法では、公共投資などに限定して国債発行を認めています。「赤字国債をゼロにする」政策がこの枠をどう扱うか、実務上の整理が欠かせません。

例えば、ある政府が防衛費を大幅に増やすため増税を選択したとします。投票上の支持があっても、増税により消費が落ち込めば税収そのものが減り、結局財政悪化に陥る可能性があります。

改正・廃止の議論と新しい財政規律の構築

近年では、財政法第4条の原則が実質的に守られていない、という指摘が増えています。([参照]財政法はなぜ厳格な財政規律を求めているのか)

この背景には、「建設国債」以外の国債発行が常態化していること、そして新たに教育や人的資本に対する国債発行を認める動きなど、制度全体の見直しを求める声があります。改正論としては、例えば。

  • 国債発行目的の明確化/範囲の再設定
  • 償還期限や借換えルールの見直し
  • プライマリーバランス(基礎的財政収支)や債務残高に関する新たなルールの導入

これらを検討せずに「赤字国債ゼロ!」という方針だけを掲げるのは、財政運営や制度設計の観点からリスクがあります。

まとめ

財政法第4条は、歳出を原則として税収等で賄うという「健全財政」の原則を定めていますが、実際には「建設国債」「特例国債(赤字国債)」といった例外措置が機能してきました。「赤字国債を全面禁止し、残高を0にする」という提案は、理論的には公平性や将来世代保護という観点で魅力的に映りますが、実務・制度面からは慎重な検討が必要です。政策として実現するためには、歳入・歳出の構造改革、新しい財政規律の枠組み整備、そして国民・国会の納得を得るプロセスが不可欠です。

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