日本国債のCDS水準とは?デフォルト確率との関係と誤解を解く

経済、景気

日本国債に関する議論の中で「CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)水準=デフォルト確率」とする説明を見かけることがあります。しかし、実際のCDS市場はより複雑な要因で価格が決まり、単なる統計的な確率とは異なる点に注意が必要です。

CDSとは何か?その基本的な仕組みを押さえる

CDS(Credit Default Swap)は、債券などの信用リスクに対する保険のような金融商品です。たとえば、ある国や企業が債務不履行(デフォルト)を起こした場合に備え、CDSを購入することで一定の補償を受けられます。

CDSのプレミアム(スプレッド)は、その信用リスクの大きさを市場がどう評価しているかを示す一つの指標となります。

日本国債のCDS水準が示すものとは?

CDSスプレッドが高ければ高いほど、債務不履行のリスクが高いと市場が見ていることを示唆します。しかし、CDSの水準は「実際のデフォルト確率」を厳密に反映しているわけではありません

たとえば、日本のような先進国で自国通貨建ての国債を発行している場合、デフォルトリスクは極めて低いと考えられています。それでもCDSスプレッドがゼロにはならないのは、投資家のリスク回避行動や市場流動性、投機的な売買など多様な要因が絡むからです。

CDS水準はどのように決まるのか?

  • 投資家の需給関係:リスク回避の動きが強まれば、CDS需要が高まりプレミアムも上がります。
  • 信用格付けやマクロ経済の状況:格付け機関の評価、財政赤字、経済成長率などが影響します。
  • ヘッジファンドなどによる投機的取引:実需とは無関係にCDS市場でポジションを取る動きも存在します。

このように、CDS水準は多様なプレイヤーの思惑によって日々変動しており、単なる確率論では説明できないダイナミズムがあります。

「CDS=デフォルト確率」という誤解が生まれる理由

CDSのスプレッドから簡易的に「デフォルト確率」を推定する数式(たとえばプレミアム÷損失率)が使われることがあります。これは金融工学上の一つの近似手法ですが、現実の市場価格はこの計算式に必ずしも沿っていません。

CDS水準を「確率」として語る解説者の多くは、こうした理論式を根拠にしている可能性があります。しかしこれは、理論と現実を混同していると言えるでしょう。

実際にCDS市場が機能したケース

たとえば、ギリシャ債務危機の際にはギリシャ国債のCDSスプレッドが急上昇し、後に実際にデフォルトが起きたことから「CDS=予兆」として機能した側面がありました。

ただしこれは、ギリシャがユーロ建て債務で自国通貨発行ができず、明確な返済困難リスクを抱えていたという特殊な状況下での話です。日本のような先進国とは根本的に事情が異なります。

まとめ:CDS水準は「市場の温度計」、しかし確率ではない

CDS水準が高い=デフォルトする確率が高い、と単純に言い切るのは誤りです。市場参加者の心理やリスク許容度、地政学的リスクなど、多くの要因が複合的に反映されるのがCDS市場です。

CDS水準はあくまで「市場がどう感じているか」という温度計のようなものであり、数学的な確率や客観的なデフォルト可能性とは分けて理解することが重要です。

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