IS-LMモデルは、経済学の中でも特にマクロ経済政策を理解する上で重要な理論のひとつです。しかし「物価は一定と仮定されているのか?」という点については、意外と見過ごされがちです。この記事では、IS-LMモデルにおける物価の前提と、それが経済モデルに与える影響について、基礎からわかりやすく解説します。
IS-LMモデルの概要:財と貨幣の市場の均衡を表現
IS-LMモデルは、財市場の均衡(IS曲線)と貨幣市場の均衡(LM曲線)を同時に満たす国民所得と利子率の組み合わせを表すものです。IS曲線は「投資=貯蓄」、LM曲線は「貨幣需要=貨幣供給」を示します。
このモデルを通じて、財政政策(政府支出・税制)や金融政策(金利・貨幣供給)が国民所得や金利に与える影響を分析できます。
IS-LMモデルは物価が一定という前提で構築されている
標準的なIS-LMモデルでは、物価は「固定」として扱われます。これは短期の分析に特化しているためであり、物価の変動は考慮されません。この前提により、実質貨幣供給(名目貨幣供給 ÷ 物価)が一定であると仮定され、LM曲線が固定されるのです。
したがって、物価変動による実質貨幣供給の変化を考慮したい場合は、IS-LMモデルの枠組みだけでは対応できません。
物価が変動するケース:IS-LM-PC(フィリップス曲線)モデルへ
物価変動を分析に取り入れたい場合、IS-LM-PCモデルが使用されます。これはIS-LMモデルに加えて、インフレと失業の関係を示すフィリップス曲線を加えた拡張モデルです。
このモデルでは、中央銀行の金融政策や期待インフレ率が物価に与える影響を動学的に分析できます。実際の政策決定では、こうした拡張モデルが重視されます。
実際の経済では物価は変動する:現実との乖離
実経済では、インフレやデフレといった物価変動は日常的に発生しています。そのため、IS-LMモデルはあくまでも「短期かつ教科書的な仮定」に基づいた理論的な枠組みであると認識する必要があります。
実際の政策判断や分析では、DSGEモデルやニューケインジアンモデルなど、物価の柔軟性を考慮した複雑なモデルが使われています。
学術的視点から見るIS-LMモデルの意義
IS-LMモデルは、物価が一定であるという仮定を置くことで、複雑なマクロ経済の因果関係を可視化しやすくするという利点があります。これは、経済学を学び始めた学生や初学者にとって極めて有益です。
ただし、物価が固定された前提のもとでの政策評価には限界があるため、発展的には他のモデルへの理解が求められます。
まとめ:IS-LMモデルは短期的分析に特化した「固定物価」モデル
IS-LMモデルでは物価が変動しないという前提のもとで経済の均衡を分析します。この仮定により、貨幣の実質的価値が一定とされ、分析がシンプルになります。しかし、現実の経済では物価は変動するため、物価を考慮した分析にはIS-LMモデルの枠を超えたモデルが必要になります。
経済学の学習においては、まずIS-LMモデルの基本構造を理解し、その限界と発展形もあわせて学んでいくことが重要です。

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