多くの国では経常赤字は警戒される経済指標のひとつですが、米国についてはそう単純に語れません。実際、長年にわたって経常赤字を続けながらも、アメリカ経済は堅調な成長を維持しています。この記事では、なぜ米国が経常赤字でも問題が起きにくいのか、その背景にある産業構造と国際金融システムの関係性について解説します。
経常赤字とは何か?基本をおさらい
経常赤字とは、輸出より輸入の方が多く、海外に対して支払うお金が受け取るお金を上回っている状態を指します。普通ならこれは国力の低下や通貨安の要因とされます。
しかし、米国の場合は恒常的に赤字でありながら、ドルの信認は揺らいでいません。ここに注目すべき構造的な理由があります。
米国が赤字でも成長し続ける理由
1. 高付加価値産業の優位
米国はIT、医療、金融、航空宇宙などの高付加価値産業に強く、GDPの多くがサービス産業によって構成されています。製造業で輸入超過でも、知的財産や高額サービスの輸出でバランスを取っています。
2. ドルの基軸通貨としての特権
世界貿易の大半が米ドル建てで行われているため、米国は世界中から資本流入を受ける立場にあります。これが経常赤字のファイナンスを可能にしています。
海外からの投資が経済の血流を担う
米国は国債や不動産、ベンチャー企業への投資先として圧倒的な信頼を得ています。経常赤字で流出した資金は、直接投資や証券投資として戻ってくる「双子の構造」が成立しており、むしろ赤字であること自体が投資の呼び水となっています。
例えば、日本や中国の政府系ファンド、サウジアラビアのSWFなどが米国債を保有しているのはその象徴です。
実例:AppleやGoogleのような超巨大企業
Appleは中国などで製造した製品を米国で設計・販売し、その利益の大半を米国内に還流させています。Googleも広告サービスを世界中で提供し、収益は米国の本社に集まります。
このように、「見かけ上は赤字」でも、実質的にはグローバルで経済的主導権を握っているのです。
とはいえリスクもある:持続可能性の議論
いくら基軸通貨といえども、無制限に経常赤字を続けることには議論があります。ドルの信認が下がれば資金流出が加速する可能性もあるため、金融引き締めや金利操作などでバランスを取る必要が出てきます。
また地政学リスクや供給網の変化によって、経常赤字が構造的な弱点となるシナリオも想定されてはいます。
まとめ:米国の経常赤字は「機能的な選択肢」
米国の経常赤字は、高付加価値産業の強さ、ドルの国際的信用、世界からの投資流入により、持続可能な構造として認識されています。
つまり、これは単なる赤字ではなく、グローバル経済の中で「世界から信頼されているからこそ可能な赤字」と言えるでしょう。むしろ赤字を維持することで、成長のためのエネルギーを世界中から取り込む装置として機能しているのです。

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