日本では1990年代から長期にわたってデフレが続き、物価がほとんど上がらない状況が常態化していました。その中で、賃金がほぼ横ばいだったにもかかわらず「実質賃金」が維持あるいは上昇していたことが注目されています。では、今のようなインフレ下で実質賃金が下がっている現在と比較して、過去のデフレ期は本当に「良かった」のでしょうか?
実質賃金とは何か?
実質賃金とは、名目賃金(支払われる給与額)を物価で割って得られる「実際に買えるモノの量」を示す指標です。たとえば月給30万円でも、物価が2倍になれば実質的には15万円の価値になります。
したがって、物価が下がる(デフレ)状況では名目賃金が変わらなくても、実質賃金は上昇します。これが「デフレ下で実質賃金が上がっていた」という現象の正体です。
デフレ時代の「実質的豊かさ」は幻想だった?
確かに、家計の支出感覚としては物価が安く、暮らしやすかったと感じた方も多いでしょう。しかし、これは短期的な視点にすぎません。デフレは企業の収益力や投資意欲を低下させ、長期的には雇用や経済成長を停滞させます。
実例として、デフレ期の日本では新卒採用の抑制、非正規雇用の増加、倒産件数の上昇といった「目に見えにくい不安定さ」が社会に広がっていました。
インフレで実質賃金が下がる今の課題
現在はコストプッシュ型のインフレ(エネルギー・原材料価格の上昇など)によって、物価だけが先行して上がる一方、賃金の上昇が追いついていないのが現状です。このため実質賃金は低下傾向にあります。
たとえば2023年、消費者物価指数(CPI)は前年比で3〜4%上昇した一方で、名目賃金の伸びは2%前後にとどまり、実質的な可処分所得は減少しています。
どちらが「良い」とは一概に言えない理由
デフレは生活費を抑えるという意味ではメリットもありましたが、経済全体の活力を奪うというデメリットも大きかったのです。一方、インフレ下でも賃金上昇が伴えば、実質賃金の改善とともに経済の成長も期待できます。
つまり、重要なのは「物価と賃金のバランスが取れていること」であり、単純に「デフレが良かった」「インフレが悪い」と判断するのは適切ではありません。
今後どうするべきか?個人としての視点
経済環境が変動する中で、家計を守るには柔軟な資産運用や支出管理が重要です。たとえば、積立NISAやiDeCoを活用した資産形成、生活防衛資金の確保、値上げに備えた購買行動の見直しなどが現実的な対策です。
また、スキルアップによるキャリアの向上も、賃金上昇につながる有効な方法です。経済の波に左右されない「稼ぐ力」を育てることが、長期的な安定につながります。
まとめ
デフレ下での実質賃金の維持は、一見すると暮らしやすいように思えるかもしれませんが、経済の停滞や将来不安の温床でもありました。一方、インフレ下では確かに生活コストは増しますが、経済全体としての好循環に向かう可能性もあります。
大切なのは、過去と今を単純に比較するのではなく、変化にどう対応していくかを考える視点です。経済の動きと賃金の関係を正しく理解し、自らの行動に活かすことが、これからの生活の鍵となります。

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