マクロ経済学で学ぶ貿易収支の均衡条件と政府支出の調整方法

経済、景気

マクロ経済学における貿易収支(外需)は、輸出(EX)から輸入(IM)を差し引いた値であり、国家の外部部門のバランスを表します。政策当局が財政政策、特に政府支出(G)を通じてこの貿易収支を調整する必要がある場面も少なくありません。本記事では、貿易収支を均衡(EX−IM=0)させるために、政府支出をどのように調整すべきかを具体的な数値例を交えて解説します。

マクロ経済の基本恒等式を理解する

まずはマクロ経済の国民所得恒等式を確認しましょう。

Y = C + I + G + (EX − IM) これは支出面から見たGDPの構成です。ここでYは国民所得、Cは消費、Iは投資、Gは政府支出、EXは輸出、IMは輸入を表します。

また、可処分所得(YD)は YD = Y − T(Tは租税)であり、消費関数Cは一般に C = c(Y − T) の形を取ります。ここでcは限界消費性向です。

例題データを使った具体的な分析

以下の数値が与えられていると仮定します。

  • Y = 200(国民所得)
  • I = 30(投資)
  • G = 50(政府支出)
  • T = 60(税金)
  • EX = 34(輸出)
  • IM = 32(輸入)

このとき、EX − IM = 2 となっており、貿易収支は黒字です。これを均衡(EX − IM = 0)にするには、外需を減らすか内需を増やす必要があります。今回は政府支出を操作することで均衡を目指します。

消費関数と乗数効果を用いて考える

限界消費性向をc = 0.8と仮定します。消費関数は C = 0.8(Y − T) = 0.8(200 − 60) = 0.8 × 140 = 112 です。

国民所得の構成を見ると、Y = C + I + G + (EX − IM) = 112 + 30 + 50 + 2 = 194。実際のYは200なので、6のギャップが存在します。

貿易収支の黒字を0にするためには、内需を6増やす必要があると考えます。そこでGを何単位増やせばいいかを考えるには、乗数を使います。

政府支出乗数による計算

政府支出乗数は 1 / (1 − c) = 1 / (1 − 0.8) = 5。つまり、Gを1増やすとYは5増えます。

したがって、Yを6増やすためには Gを6 / 5 = 1.2 増やせばよいことになります。

このようにして、貿易収支を均衡させるためには 政府支出を1.2だけ増加させる必要があるという結論が導き出されます。

貿易収支が均衡とはどういうことか?

貿易収支の均衡とは、EX − IM = 0 の状態を意味します。すなわち、「輸出と輸入が等しい」ことを示しており、外国との純取引がない状態です。

この状態は、マクロ経済モデルにおいて望ましい中立状態として扱われ、特に開放経済下での総需要分析では重要な仮定の一つです。

まとめ:財政政策による調整のポイント

政府支出は、経済の需給バランスを調整する有効な政策手段の一つです。特に貿易収支の黒字や赤字を修正する際には、限界消費性向や乗数効果を考慮しながら、必要な支出変化量を計算することが重要です。

今回のように具体的な数値を使って分析することで、経済モデルがどのように現実の政策判断に結びつくかが見えてきます。数式の背後にある経済の仕組みを理解することで、より深いマクロ経済の洞察が得られるでしょう。

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