賃金上昇率より物価上昇率が低いのに実質賃金がマイナス?その理由をわかりやすく解説

経済、景気

最近の経済ニュースでは「賃金上昇率は4〜5%」と報じられる一方、「実質賃金はマイナスが続く」という報道も見られます。直感的には、物価上昇率が2〜3%にとどまるのであれば、実質賃金もプラスになるはずと思えますが、なぜ実際はそうならないのでしょうか?この記事では、その背景をわかりやすく解説します。

名目賃金と実質賃金の違い

まず基本として押さえておきたいのが「名目賃金」と「実質賃金」の違いです。名目賃金は単純に支給された給与額を表します。一方で、実質賃金は物価の影響を差し引いた「実際にどれだけのモノ・サービスが買えるか」を示す指標です。

つまり、たとえ名目賃金が上がっても、それ以上に物価が上がれば、実際の購買力は低下するため、実質賃金は下がることになります。

統計上の「平均」の落とし穴

もう一つの要因は、統計の出し方です。賃金上昇率4〜5%という数字は、すべての労働者が均等に上昇しているわけではありません。実際には、一部の業種・職種、特にITや建設など人手不足の分野で大幅な賃上げがされているのに対し、サービス業や派遣などではほぼ横ばい、あるいは微増にとどまることも。

このように、高い上昇率を示す一部の層が平均を押し上げているため、統計上は「賃金上昇率が高い」と見えても、実感としては賃金が増えていない人が多数存在します。

実例:生活費の上昇が実質賃金を圧迫

たとえば、名目賃金が月30万円から31.5万円(+5%)に上昇した場合でも、生活費が月25万円から27万円(+8%)に増加していれば、手元に残るお金は減る計算になります。

また、最近の物価上昇は食品、光熱費、ガソリンなど生活必需品が中心です。これらの出費が増えることで、生活感覚としての「実質的な豊かさ」は確実に減少していきます。

統計発表のタイミングによるズレ

賃金と物価は、それぞれ異なるタイミングで発表されるため、一時的にズレが生じることもあります。たとえば、春闘後に反映される賃金は年度の途中に影響し、統計上の賃金上昇率にはタイムラグがあることも。

さらに、物価の統計にはエネルギー価格など変動が大きい項目が含まれており、指数が想定以上に高止まりするケースもあります。

政策と展望:どうすれば実質賃金が改善するのか?

政府や日銀は、企業の価格転嫁と賃金引き上げの好循環を促す政策を打ち出しています。中小企業への支援策や最低賃金の引き上げなどが進められている一方で、物価上昇が速すぎるとその効果を相殺してしまいます。

今後、安定したインフレ率(2%前後)と持続的な賃上げがバランス良く実現すれば、実質賃金がプラスに転じる可能性があります。

まとめ:数字だけでは見えない「実感」と「ズレ」

賃金上昇率と物価上昇率だけを比較すると、「なぜ実質賃金がマイナスなのか」と疑問に感じるのは当然です。しかし実際には、統計の平均化、物価の影響範囲、生活実感との乖離など、複数の要因が重なっています。

数字だけでなく、その背景にある構造や実態にも目を向けることで、より正確に経済の動きを読み取ることができるようになるでしょう。

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