経済学の中でも、ミクロ経済学は個別市場や企業、消費者の行動に焦点を当てます。その中で「比較静学」は、ある条件の変化が市場均衡にどのような影響を与えるかを分析するための基本的かつ重要な考え方です。この記事では、ミクロ経済学の初歩的な知識を前提に、市場均衡の変化を比較静学的に捉える方法を丁寧に解説していきます。
比較静学とは何か?
比較静学(Comparative Statics)とは、経済モデルにおける外生的な変数(例えば税率や所得など)の変化が、内生的な変数(価格や取引量など)にどのように影響するかを比較する手法です。時間の経過や調整過程は考慮せず、あくまで変化前と変化後の「均衡点」を比較するという特徴があります。
たとえば、消費税の導入がある商品の価格や需要量にどのように影響するかを予測する際などに使われます。
市場均衡の基本構造
市場均衡とは、需要量と供給量が一致する価格と取引量のことを指します。通常、以下のような2つの関数で表現されます。
- 需要関数:D(p) = a – bp
- 供給関数:S(p) = c + dp
ここで、pは価格、a, b, c, dは定数とします。市場均衡はD(p) = S(p)を満たす価格p*と対応する数量Q*で決まります。
これを解くことで、市場における均衡価格と均衡取引量を得ることができます。
比較静学での市場変化の分析手順
比較静学で市場均衡の変化を調べる手順は以下の通りです。
- 初期状態の均衡を算出
- パラメータ(例えばaやbなど)の変化を仮定
- 新たな均衡を計算
- 新旧の均衡を比較して変化を分析
たとえば「a」の値が増加した場合、それは消費者の需要増を意味し、均衡価格が上昇することが数学的にもグラフ的にも理解できます。
公式に基づく感応度の把握
経済学では「微分」を用いて感応度(ある変数が他の変数にどれだけ影響を受けるか)を定量的に把握することもあります。均衡価格p*をaについて微分すると、
dp*/da = 1 / (b + d)
という式が得られ、「a」が増加すると均衡価格も上がることがわかります。このような数学的アプローチをとることで、より正確な予測が可能になります。
グラフを用いた理解
比較静学の理解には、供給曲線と需要曲線のグラフが非常に有効です。例えば、需要が増加することで、需要曲線が右にシフトし、それによって均衡点が右上に移動することが視覚的に確認できます。
この視覚的理解は、教科書や試験問題でも多く使われるため、グラフの描き方と意味はしっかり押さえておきましょう。
実例:所得増加による市場変化
例えば、所得が増加すると需要関数の切片aが大きくなると仮定します。この場合、需要曲線が右に移動し、均衡価格と均衡取引量の両方が増加します。これが、比較静学による分析の一つの典型例です。
このように、1つの変数を変えるだけで市場がどのように反応するかを分析するのが比較静学の本質です。
まとめ:比較静学で経済の仕組みを見抜く
比較静学は、経済の変化に対する「ビフォーアフター」を比較することで、その影響を定量的に分析できる便利なツールです。ミクロ経済学の基礎知識と、簡単な数学的操作があれば理解可能であり、政策分析や企業戦略の基礎にも応用されています。
まずは簡単な需要・供給モデルから始め、グラフや数式と組み合わせて、経済変化を「見える化」してみましょう。

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