IS-LMモデルと実質貨幣需要:LM曲線が垂直になる理由とその影響

経済、景気

IS-LMモデルは、経済学において総需要と総供給を結びつける重要な分析ツールです。特に、実質貨幣需要関数が与えられた状況で、LM曲線が垂直に近づく条件を理解することは、経済政策を考える上で非常に重要です。本記事では、LM曲線が垂直になる理由とその経済的影響について解説します。

IS-LMモデルの概要

IS-LMモデルは、総需要と貨幣市場の均衡を描くモデルです。IS曲線は投資と貯蓄の均衡を示し、LM曲線は貨幣市場の均衡を示します。IS曲線は、国民所得(Y)と利子率(r)の関係を示すものですが、LM曲線は、実質貨幣需要と供給の関係によって形成されます。

このモデルにおけるIS曲線とLM曲線の交点は、経済全体の均衡点を示します。そこで重要なのが、実質貨幣需要関数(Md/P = m0 + mY − nr)です。この関数が示すのは、経済の実質貨幣需要が国民所得(Y)と利子率(r)にどのように依存するかという関係です。

実質貨幣需要関数の変化とLM曲線

実質貨幣需要関数は、一般に次のように表されます:
Md/P = m0 + mY − nr ここで、m0は定数、mは国民所得(Y)の感応度、nは利子率(r)の感応度を示します。

この関数において、nが非常に大きくなると、利子率の変動が貨幣需要に与える影響が非常に強くなります。利子率が上昇すると、貨幣需要は急激に減少し、逆に利子率が下がると貨幣需要が急増します。

LM曲線が垂直に近づく理由

LM曲線が垂直に近づくのは、利子率(r)の変化が実質貨幣供給(Ms/P)と実質貨幣需要(Md/P)を均衡させるために必要な国民所得(Y)の変化にほとんど影響を与えなくなるためです。具体的には、nが非常に大きい場合、貨幣需要は利子率に非常に敏感になり、利子率の変化に対して実質貨幣供給の調整が追いつかない状態になります。

その結果、貨幣市場はほぼ完全に利子率に依存するため、国民所得(Y)の変化にはほとんど反応せず、LM曲線は垂直に近い形になります。この状態では、中央銀行が実施する金融政策の効果が限られ、利子率を通じて経済活動を調整することが難しくなります。

実例:高い利子率感応度の影響

例えば、もし金融市場で利子率がわずかに変動すると、それに伴い実質貨幣需要が急激に変化するような状況を想像してみましょう。利子率が少しでも上昇すれば、企業や家庭の貸し出し需要は減少し、貨幣の需要も大きく減少します。このような場合、貨幣市場の均衡は利子率だけで決まるため、国民所得(Y)はほとんど影響を受けません。

このような動きが続くと、LM曲線は実質的に垂直となり、経済の総需要曲線も垂直に近い形で描かれます。つまり、財政政策や金融政策の影響を受けにくい状態となり、経済の安定性を保つためには他の政策手段が求められることになります。

総需要曲線の変化とその影響

LM曲線が垂直に近づくと、総需要曲線も垂直に近づくことになります。これは、利子率が経済活動に与える影響が非常に強く、国民所得の変動が財政政策や金融政策の効果をほとんど受けなくなるためです。具体的には、金融政策や利子率操作によって経済を調整するのが難しくなり、他の政策手段、例えば財政政策や構造改革が重要になります。

このような状況においては、政府は金融政策だけに頼らず、経済全体の構造を改善するような政策が求められることになります。

まとめ

LM曲線が垂直に近づく原因は、実質貨幣需要関数の利子率に対する高い感応度にあります。この状態では、利子率の変動が経済活動に与える影響が大きくなり、中央銀行の金融政策がほとんど効かなくなります。結果として、総需要曲線も垂直に近づき、政府は金融政策以外の手段を講じる必要があります。これにより、経済政策の設計には新たな視点が求められることになります。

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