M&A(企業の合併・買収)や不動産(土地)取引において、「取得価格は非公表」というケースを目にすることがあります。このような情報の非開示には、売り手と買い手それぞれにとって重要な事情があることが少なくありません。本記事では、その背景にある理由や代表的な事例を解説します。
守秘義務契約(NDA)の役割とは
最も基本的な理由は、売買契約に付随して結ばれる守秘義務契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)です。NDAによって、取引当事者は取引の詳細や条件を第三者に漏らすことを禁じられます。これは、競合他社や市場関係者への情報流出を防ぐためです。
たとえば、不動産投資ファンドが複数の土地を取得している場合、個別の価格が明らかになると、次の取引交渉で不利になる可能性があります。
売り手・買い手双方の経営戦略に配慮が必要
売り手が経営不振でやむを得ず売却するケースでは、「安値で手放した」と報じられることでブランド価値や企業イメージに傷がつくおそれがあります。一方、買い手としても「高値で買った」と見られることによる株主や市場からのプレッシャーを回避したいという思惑があります。
特に上場企業同士のM&Aでは、株価に影響を与える要素になるため、価格の扱いには慎重になります。
価格が交渉材料になるケースも
不動産業界や事業承継においては、価格が公表されると、他の取引相手との交渉に影響することもあります。たとえば、ある地価で買った事実が他の地主に知られると、「うちにも同額を払ってほしい」と価格吊り上げに繋がるリスクがあります。
このため、一部の大規模開発では、周辺地主との関係維持のために取得価格を非公開にすることがあります。
法的な開示義務がない場合
上場企業同士の取引で一定額以上になる場合は、金融商品取引法などで開示義務が課されることがあります。しかし、非上場企業同士や取引規模が基準以下である場合は、そもそも法的に開示義務がありません。そのため、当事者の判断で非公表とすることが可能です。
たとえば、地方の中小企業が事業を譲渡する場合、多くは非開示とされます。
過去の実例から見る非公表のケース
ある外資系ファンドが日本の地方銀行の一部資産を取得した際、価格は非公表でした。背景には、買収対象となった資産の将来的な再売却や、地元への配慮があったとされています。
また、大手企業によるスタートアップ買収では、買収金額が公開されないケースも多く見られます。これは、買収された側の技術や人材流出を防ぐ目的もあります。
まとめ:価格非公表は珍しいことではない
取得価格が非公表となる背景には、競争上の配慮、ブランド保護、交渉上の戦略、法的義務の有無など複数の要因が絡みます。そのため、「非公表=不透明」というよりも、ビジネス上合理的な判断であることが多いのです。
こうした背景を理解しておくことで、ニュースや企業発表をより深く読み解くことができるようになるでしょう。

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