中小企業における自社株対策として、従業員持株会を設立し、安定的な株式保有構造を構築する動きが広がっています。その際に重要となるのが、既存株主が保有する少数株式の移転方法とその評価額です。特に「配当還元価額」での買取は可能なのかという点は、税務・法務両面で慎重な検討が求められます。本記事では、その判断基準と注意点を詳しく解説します。
配当還元価額とは何か?
配当還元価額とは、評価対象株式が継続的に配当を行っている場合に、配当金額をもとに株価を計算する方法です。具体的には、類似業種比準価額に代えて、一定の計算式で株価を割り出す簡便な手法とされています。
税務上では、評価対象が少数株主であり、かつ経営に関与していない場合などに限定して、この方法を用いることが認められています。ただし、常に適用できるわけではなく、背景と意図に応じて慎重に選定する必要があります。
持株会設立時における株式買取の評価基準
従業員持株会へ株式を移転する場合、その取引が「適正な時価」で行われたかどうかが課税当局のチェックポイントになります。特に、法人が保有している少数株式を持株会が買い取る場合、「低廉譲渡」とみなされない価格設定が求められます。
この場面では、原則として類似業種比準価額や純資産価額が用いられますが、株式の性格や取引の相手が特定されている点から、状況次第では配当還元価額の適用も検討されます。ただし、安易な適用は贈与課税のリスクを伴います。
配当還元価額が適用できる具体的なケースとは?
以下のような条件が揃った場合、配当還元価額での買取が税務上問題とされにくい傾向があります。
- 対象株主が議決権の少ない「少数株主」である
- 過去数年間に安定的な配当実績がある
- 株主が会社の経営に関与していない法人または個人
- 持株会が新設であり、経済合理性のある持株政策である
たとえば、総株式数の3%未満を保有している退職済みの役員が設立から関係のない外部法人を通じて保有している場合、配当還元価額での買取が認められた実例も存在します。
税務上のリスクと回避のポイント
配当還元価額で買取を行った場合、その金額が市場性や他の評価方法とかけ離れていると、贈与税・法人税・所得税のリスクが生じることがあります。特に税務調査では、適正な株価算定資料の有無が問われます。
対応策としては、第三者の評価機関による株価評価書の取得や、顧問税理士・弁護士による見解書を添付するなど、取引の正当性を客観的に証明できる準備が重要です。
実務上の留意点と持株会運営の成功要因
株式の移転価格の設定は、税務だけでなく、従業員の納得感やモチベーションにも影響します。あまりに高すぎると買い手不在となり、安すぎれば不公平感や外部からの指摘を受けるリスクがあります。
持株会設立後も、運営ルール、配当方針、解散時の株式処理などを明確に定め、企業価値向上と株主の利益の両立を目指す体制づくりが必要です。
まとめ:配当還元価額での買取は「条件付きで可能」だが慎重な判断を
法人が保有する少数株式を持株会に移転する際、配当還元価額での買取は一定条件下で可能ですが、税務上の解釈や実務的な判断が求められる高度なテーマです。
誤った価格設定は大きなリスクを伴うため、必ず専門家(税理士・弁護士・評価機関)と連携し、客観的な評価に基づく透明性ある取引を行いましょう。

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