「発行済株式総数の4倍を超えてはならない」というルールについて疑問を持つ方は少なくありません。とくに、これから上場を目指す企業や投資家にとって、「まだ株式がゼロの会社がどうやって4倍ルールを守るのか?」という点は直感的に理解しにくいかもしれません。この記事では、発行可能株式総数のルールやその背景、そして上場準備段階での取り扱いについて丁寧に解説します。
「4倍ルール」とは?上場会社の株式発行に関する基本的な制限
「発行可能株式総数」は、会社が登記上発行できる上限の株数です。日本の公開会社(上場企業)では、発行済株式総数の4倍を超える発行可能株式総数は設定できないという制限があります(会社法第37条の2)。
この制限は、会社の安易な希薄化を防ぎ、投資家の権利を保護する目的で導入されています。つまり、すでに発行されている株式が100株なら、発行可能株式総数の上限は400株までということになります。
発行済株式数ゼロの場合はどうなるのか?
未上場会社や設立直後の会社では、定款により発行可能株式総数を任意に定めることが可能です。発行済株式が0であっても、たとえば「発行可能株式総数を10,000株」として定款を作成し、そのうちの数百株を発行してスタートするという形を取ります。
この段階ではまだ公開会社(上場企業)ではないため、4倍ルールの制限は適用されません。公開会社になった段階で、すでに発行済株式がある状態になるため、その時点からルールが効力を持ち始めます。
上場準備中の企業が取る実務的なステップ
IPO(新規上場)を目指す企業は、通常以下のような流れを踏んで株式を準備します。
- 定款に発行可能株式総数を記載(例えば1,000,000株)
- 出資者や創業者に対して数万株を発行し、発行済株式とする
- IPO直前に増資・株式分割などを行って、発行済株式数を増やす
- 上場直前に「発行済株式数の4倍以内」で発行可能株式総数を調整
このように、上場直前に制度に合わせた見直しを行うことで、法的な整合性を保っています。
なぜ4倍なのか?制度設計の背景とその意味
「4倍」という数字には根拠があります。過去には、上場企業が安易に株式を増やすことで経営陣に有利な状況を作り出す例があり、これを防ぐために設定されたのがこのルールです。
例えば、ある企業が10,000株を発行している状態で、1億株の発行可能株式総数を定款に設定していたとしたら、経営者が一気に支配権を握るような増資が可能になってしまいます。このような事態を防ぐため、制限が必要とされました。
上限を超えて増資することはできないのか?
もちろん、企業が成長し、さらに株式を発行したくなった場合には、株主総会の特別決議で定款を変更することで、発行可能株式総数を引き上げることが可能です。
たとえば、現在の上限が400株であっても、特別決議により発行済株式を500株に増やし、そのうえで新たな発行可能株式総数を2,000株に設定する、というようなステップを踏めば問題ありません。
まとめ:4倍ルールは成長を妨げるのではなく、透明性を守るための仕組み
「発行済株式総数の4倍」という制限は、会社の成長や株主の利益を損なうためのものではありません。むしろ、公正な資本政策と投資家保護を両立させる制度設計の一部です。
未上場企業も、IPOを見据えて適切なタイミングで定款・株式数の見直しを行うことで、この制度を十分に活用できます。理解を深め、成長戦略に役立てましょう。

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