近年の経済政策議論の中で、「消費税を下げると富裕層が得をする」という主張がたびたび取り上げられます。特に2025年に入り石破首相が言及したこの点について、「なぜ富裕層優遇になるのか?」と疑問に思った方も多いでしょう。本記事では、消費税と所得階層の関係を経済学の観点からわかりやすく解説していきます。
そもそも消費税はどんな税制か?
消費税は間接税であり、所得に関係なく消費に対して一律に課税される「比例税率」の仕組みをとっています。そのため、低所得者・高所得者ともに同じ税率を負担するという特徴があります。
たとえば、年収200万円の人が食費や日用品に100万円使えば、10万円の税金がかかります。一方で、年収2000万円の人が300万円を消費しても、支払う消費税は30万円であり、割合で見ると低所得者のほうが負担感が大きくなるのです。
消費減税は金額ベースで高所得層にメリットが集中
経済学では、消費減税による「減税メリット」は消費額が多い人ほど金額が大きくなると考えられています。つまり、10%の消費税が5%に引き下げられた場合、年間300万円消費する人は15万円得をし、100万円しか消費しない人は5万円の恩恵しか得られません。
そのため、消費の絶対額が大きい高所得層ほど、減税による実利が大きくなる構造となります。これが「消費減税は富裕層に恩恵が大きい」とされる理由です。
エンゲル係数と逆進性の視点から見る
エンゲル係数とは、所得に占める食費の割合のことで、低所得者層ほど生活必需品への支出が多く、自由に使えるお金が少ない傾向を示します。
その結果、同じ税率が課されても、低所得者層のほうが「生活全体への打撃」が大きくなるという問題があり、これを「逆進性(regressivity)」と呼びます。消費税はこの逆進性を持つ典型的な税制なのです。
減税よりも給付付き税額控除のほうが公平?
消費税の負担軽減を目指すなら、単に税率を下げるのではなく、給付付き税額控除(給付金と税金控除を組み合わせた制度)のような方法のほうが、所得再分配の観点では効果的とされています。
たとえば、低所得世帯に一定額の現金を給付することで、生活支援をしつつ、富裕層への過剰な恩恵を避けることができます。
過去の政策事例と国際的な比較
日本では2020年に消費税率引き下げを求める声が高まりましたが、政府は最終的に軽減税率制度(食品や新聞などに8%を適用)で対応しました。これは、所得に関係なく広く消費する品目を軽減対象にすることで、逆進性の緩和を図った例です。
ドイツやイギリスでも軽減税率や給付措置を通じて、低所得者への配慮がなされています。一方で、アメリカでは消費税(州税)自体がなく、所得税や資産課税で再分配を行う構造です。
まとめ:消費減税の恩恵は「誰にとって有利か」を見極める視点が必要
石破首相の「消費減税は富裕層に恩恵が大きい」という発言は、経済学的に見ても合理的な見解です。消費額に比例して恩恵が拡大する仕組みである以上、本当に困っている人を救うには、より精密な所得再分配政策が求められるのです。
減税の議論は感情的になりやすいものですが、誰にどれだけの影響があるかを冷静に捉え、仕組み全体を考えることが大切です。

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