経済学という学問は、金融政策や税制、インフレ対策から企業経営まで広く関わる重要分野ですが、他の自然科学と違って「これが絶対の正解」という答えがなかなか見つかりません。この記事では、経済学がしばしば”暗中模索”と感じられる理由について、実例とともに分かりやすく解説します。
経済学は”人間の行動”を扱う社会科学
経済学は自然法則ではなく、感情や欲望、予測に基づく人間の行動を対象とします。そのため、同じ政策を実施しても、文化・時代・国によって異なる結果になることがあります。これが「一つの正解」が存在しにくい大きな要因です。
たとえば、財政出動(公共投資)によって景気が回復する場合もあれば、期待に反してインフレだけが進むこともあります。人々の心理が不確実性に大きく影響を与えるため、モデル化しても予想通りにいかないのです。
多様な学派と理論が並立している
経済学には「ケインズ経済学」「新古典派経済学」「マルクス経済学」など、多くの異なる学派が存在します。それぞれが異なる仮定や前提で構築されているため、同じ現象を全く異なる視点から説明することができます。
たとえば、リーマンショック後の金融政策についても、「量的緩和が有効だった」とする立場と、「逆に資産バブルを招いた」とする批判的立場が共存しており、明確な一致は見られません。
現実世界の複雑性に理論が追いつかない
経済は数百万人〜数億人単位の意思決定の積み重ねで動く超複雑系システムです。モデルで扱える変数は限られており、理論だけではリアルな世界の動きを完全には予測できません。
近年ではビッグデータやAIの活用で改善は進んでいますが、それでも突発的な出来事(パンデミック、戦争、原油高など)が経済全体に波及し、従来の理論では説明できない事象が続発しています。
実務家と学者の視点の違い
財務省職員や金融機関のエコノミストは現実の経済政策や投資判断に関わるため、実務的な判断を重視します。一方で、大学の経済学者は純粋な理論構築やモデル検証を主な目的とすることが多く、アプローチが異なります。
このため、ある政策についても「実務家は必要と判断するが、学者は効果に懐疑的」といったズレが生じることがあります。どちらが正しいとも言い切れず、見方によって評価が変わるのが経済学の特徴です。
実例:インフレ対策をめぐる論争
2022年以降、世界中でインフレが進行した際、欧米の中央銀行は利上げを急ぎました。これに対し、急激な利上げは景気後退を招くとの批判も根強く、学者やエコノミストの間でも見解が分かれました。
結果として、一部の国では利上げが効きすぎて失業率が上昇し、経済的に大きな負担となったケースもありました。こうした事例からも、経済政策に”唯一の正解”がないことが分かります。
まとめ:経済学は不確実な世界の中で最善策を探す学問
経済学には多くの理論や視点が存在し、扱う対象も複雑なため、明確な正解が存在しにくいのが実情です。しかしそれでも、各理論が現実の経済を理解するための重要な手がかりを与えてくれることは間違いありません。
“正解が見えない”という感覚こそが、経済学が常に進化し続ける理由であり、学問としての奥深さや魅力でもあります。未来を予測するより、未来に対応する準備をするためにこそ、経済学は存在しているのです。

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