近年、米国の主要企業が外国企業による買収の対象となるケースが増加しています。特に、戦略的産業である鉄鋼業界においては、国家安全保障や経済的自立性の観点から、政府や労働組合、一般市民の間で議論が活発化しています。本記事では、U.S.スチールとNippon Steelの買収事例を通じて、外国企業による買収がもたらす影響と、それに対する政府の対応について解説します。
外国企業による買収と国家安全保障の関係
外国企業が米国の戦略的企業を買収する際、国家安全保障への影響が懸念されます。特に、鉄鋼業界はインフラや防衛産業に密接に関わっており、外国企業による支配が国家の安全保障に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、過去には中国企業による米国企業の買収が国家安全保障上の懸念から阻止された事例もあります。これにより、外国企業による買収が国家の安全保障に与える影響が注目されるようになりました。
政府の介入と法的権限
米国政府は、外国企業による買収が国家安全保障に影響を及ぼすと判断した場合、買収を阻止する権限を持っています。これは、1988年に制定された「Exon-Florio Amendment」に基づき、大統領が国家安全保障上の懸念があると判断した場合、外国企業による買収を阻止することができます。
また、米国財務省が主導する「外国投資委員会(CFIUS)」は、外国企業による米国企業の買収が国家安全保障に与える影響を審査し、必要に応じて大統領に勧告を行います。
U.S.スチールとNippon Steelの買収事例
2023年12月、日本のNippon Steelが米国のU.S.スチールを約149億ドルで買収する計画を発表しました。この買収は、U.S.スチールの株主によって承認されましたが、国家安全保障上の懸念から、当時のバイデン大統領によって阻止されました。
その後、トランプ大統領は当初この買収に反対していましたが、Nippon Steelが米国に140億ドルの投資を行い、U.S.スチールの本社をピッツバーグに維持し、米国人CEOの任命や米国政府による「ゴールデンシェア」の取得など、国家安全保障上の懸念に対応する措置を講じたことから、最終的にこの買収を承認しました。
労働組合と地域社会の反応
U.S.スチールの労働者を代表する「United Steelworkers(USW)」労働組合は、当初からこの買収に反対しており、Nippon Steelが過去に米国の貿易法に違反した経歴があることや、買収後の雇用維持に対する懸念を表明していました。
一方で、ピッツバーグ地域の一部の労働者や住民は、Nippon Steelによる巨額の投資や雇用維持の約束を歓迎し、地域経済の活性化につながると期待を寄せています。
まとめ:外国企業による買収と国家の対応
外国企業による米国の戦略的企業の買収は、国家安全保障や経済的自立性に影響を及ぼす可能性があるため、政府は慎重な対応を求められます。U.S.スチールとNippon Steelの事例は、外国企業による買収に対する政府の介入や、労働組合や地域社会の反応が複雑に絡み合うことを示しています。今後も、外国企業による買収に対する政府の対応や、国家安全保障とのバランスを取るための施策が注目されるでしょう。

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