積極財政、特に国債発行による財政出動の是非は、経済政策を考えるうえで重要な論点です。ここ数年、税ではなく国債を財源とする主張が注目を集めていますが、反対の立場にも明確な根拠があります。本記事では、積極財政に対する慎重な視点から、リスクや限界を解説します。
インフレリスクと通貨の信認の問題
最大の懸念はインフレの加速です。供給能力を超えて国債を発行すれば、通貨供給量が過剰となり、物価が急騰する恐れがあります。とくにエネルギーや食料など、輸入に依存する財の価格が上がると、生活に直結する影響が広がります。
また、通貨の信認が失われれば、円安が進行し、さらに輸入物価が上昇するという悪循環に陥るリスクもあります。これは過去のジンバブエや戦前のドイツの例からも明らかです。
長期的な財政の持続性と世代間負担
国債は将来世代への負債です。金利が低い時代は財政負担が少なく見えますが、将来金利が上昇すれば国債の利払いが国家予算を圧迫します。
仮に国債の金利が2%に上がった場合、1000兆円の債務に対して年間20兆円の利払いが必要になります。これは社会保障費や教育予算を圧迫する要因となります。
市場の信頼と金利上昇リスク
国債が市場で売られて価格が下落すれば、長期金利が上昇し、民間の住宅ローンや企業融資の金利も連動して上がります。これにより、民間投資が冷え込み景気後退を招く恐れがあります。
近年ではイギリスのトラス政権が財源なき減税策を発表し、市場の信頼を失って長期金利が急騰した事例が記憶に新しいでしょう。
中央銀行と財政ファイナンスの危うさ
積極財政論では「中央銀行が国債を買い取れば問題ない」との意見もありますが、これは財政ファイナンス=通貨の価値を毀損する行為とみなされる可能性があります。
日銀の独立性が形骸化すれば、中央銀行への信頼が損なわれ、海外投資家が日本国債を敬遠し円が売られる展開も現実になり得ます。
景気の自立回復が妨げられるリスク
財政出動に依存した経済成長は、自立的な成長力を損ねるという指摘もあります。補助金や給付金が常態化すると、企業や家計が政府に頼り、リスクを取って投資する意欲が削がれることがあるのです。
例として、バブル崩壊後の日本が公共事業中心の景気対策を繰り返したものの、潜在成長率の改善には繋がらなかったことが挙げられます。
まとめ:慎重なバランスこそが鍵
積極財政の思想には、デフレ脱却や景気刺激といった目的がありますが、国債発行には明確なリスクも伴います。インフレ、財政持続性、通貨信認、経済の自立性といった視点からの反対意見を知ることは、政策を多角的に評価するうえで不可欠です。
財政政策は万能ではなく、短期と長期、経済と金融、国内と海外の視点を総合的に見て判断する必要があります。

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