含み損の特定口座を売ってiDeCo資金に充てるのは正解か?投資判断の視点と注意点を解説

資産運用、投資信託、NISA

つみたてNISAやiDeCoなど税制優遇制度が整備され、将来の資産形成のための選択肢が広がる中、「どの資産をどのタイミングで活用すべきか」という悩みを抱える投資家も増えています。この記事では、特定口座で含み損が出ている投資信託を売却し、その資金をiDeCoの積立原資に充てる選択が正しいのかどうか、複数の視点から考察していきます。

まず確認したいiDeCoのメリットと特徴

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額所得控除されるため節税効果が非常に高い制度です。さらに、運用益は非課税で再投資され、受取時も一定の控除が適用されます。特に所得税や住民税の負担が大きい現役世代にとっては、iDeCoの掛金分が実質的に利回りを押し上げる効果があります。

例えば、所得税10%+住民税10%の合計20%が課税されている場合、月額23,000円のiDeCoを年間で276,000円積み立てたとすると、年間55,200円の節税効果があります。

含み損の投資信託を売却する判断軸

含み損が出ている投資信託を売却することには、主に次の2つの観点があります。一つは「損失確定による機会損失」、もう一つは「損失確定による税金上のメリット(損益通算)」です。

ただし、iDeCoは非課税口座であるため、損益通算の直接的な恩恵は受けられません。したがって、「含み損を抱えている投資信託の今後の見通し」と「iDeCoによる節税メリットの大きさ」のバランスで判断する必要があります。

運用期間と目標との整合性を確認しよう

53歳という年齢でiDeCoを始める場合、原則として受取は60歳以降になるため、運用期間は7〜10年程度と想定されます。そのため、iDeCo内での運用商品も中長期でリターンが期待できるインデックス投信やバランスファンドが選択肢になります。

一方、特定口座で保有しているSBI-V-S&P500などのインデックスファンドは、同様に中長期でリターンを狙う商品であり、「同じ目的の資産を税制優遇口座へ入れ替える」と考えると理にかなっています

実行例:損切りを活かして節税へ

具体的には、特定口座で含み損が出ているS&P500連動型ファンドのうち、毎月のiDeCo積立額(23,000円)に相当する分を順次売却し、銀行口座に振替。そこからiDeCo掛金として引き落とす、という形です。

例えば含み損が-19万円ある状態で月に2万円ずつ売却すれば、損失は小分けで確定され、現金化した資金を有効に活かせます。ただし、iDeCoの掛金は「給与所得者の年末調整等で反映されるため、還付は翌年」となる点にも注意が必要です。

注意点:資産配分が偏らないよう管理を

特定口座とiDeCoの中で似たような商品に集中しすぎると、リスク分散効果が薄れる可能性があります。そのため、iDeCoでは少し守りを意識した配分(バランス型や債券を加えるなど)を意識しておくと、ポートフォリオ全体の安定性が高まります。

また、S&P500系の商品は直近で調整局面にあることも多いため、「今あえて損切りせずに反発を待つ」という戦略も併存しうる判断軸です。

まとめ:目的とメリットに応じて柔軟な対応を

含み損がある投資信託をiDeCoの積立資金に充てることは、節税メリットを最大化するという観点で有力な選択肢です。iDeCo開始までに資金をどう用意するかは、資産全体の構成と運用期間を総合的に見て判断しましょう。

長期的な資産形成の視点を持ちながら、税制を味方につけた戦略的な資産移動が望まれます。専門家に相談することも有効です。

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