国際経済のグローバル化が進む中で、「巨額の投資によって生まれた利益の大半が海外に流れるくらいなら、高関税のほうがマシではないか」という感情が生まれるのは自然なことです。しかし、経済合理性の観点からは、単純な損得だけで語れない複雑な要素が絡んでいます。この記事では、関税と利益の海外流出というテーマを軸に、経済のしくみを読み解いていきます。
「利益の90%がアメリカに流れる」とは何を意味するのか
日本国内で事業を行う外資系企業、特にハイテク・製薬・IT産業などでは、研究開発や製品設計を本国(米国など)で行い、日本では販売・支店業務にとどまるケースが少なくありません。その結果、実際の利益は本国の持株会社へと配当やライセンス料という形で流れ、日本には税金や雇用、取引の一部しか残らない構造になることがあります。
これはBEPS(Base Erosion and Profit Shifting=税源浸食と利益移転)と呼ばれる国際税務の問題であり、OECDを中心にグローバルで対応が進められています。
25%の関税は本当に「マシ」なのか?
仮に輸入製品に25%の関税を課した場合、短期的には輸入業者や消費者に負担が転嫁され、物価上昇や消費停滞につながります。さらに相手国から報復関税を受ける可能性もあり、輸出企業にとっても逆風となる可能性があります。
一方、利益の海外流出は直接的な生活コストに影響を及ぼすわけではないため、国民の生活には目に見えにくい形で現れます。このため、「感情的には関税のほうが納得できる」と感じる人がいるのは理解できますが、経済全体への影響は関税の方が重く出ることが多いのです。
関税政策と国際協調のジレンマ
経済安全保障や国内産業の保護を目的として関税を導入することは可能ですが、それには相手国との関係悪化、サプライチェーンの混乱、WTO(世界貿易機関)ルールとの整合性など、慎重な判断が求められます。
米中貿易戦争では、関税応酬によって両国ともに経済成長が鈍化し、企業活動にも不透明感が増しました。こうした事例は「関税の導入=国益にかなう」とは限らないことを示しています。
外資を活用するメリットも見逃せない
外資誘致によって得られる恩恵は、税収だけではありません。たとえば。
- 雇用の創出:外資企業の進出により、高付加価値の雇用が生まれる
- 技術移転:海外のノウハウやシステムが国内企業に波及する
- 地域活性化:大規模工場やオフィスによって地元経済が潤う
利益の一部が海外に流れても、これらの波及効果によって国全体の所得やGDPが増えるのであれば、必ずしも悪いことではありません。
感情と経済のバランスをどうとるか
「利益の9割が持っていかれるのに、なぜ国は支援するのか」と疑問を持つのは当然です。しかし、経済政策は国民感情に寄り添いながらも、冷静なコスト・ベネフィット分析によって進められるべきものです。
政府も完全に利益を海外に流出させることを良しとしているわけではなく、租税回避防止の制度(移転価格税制やPE課税)を整備しています。また、国内企業の競争力強化や人材投資にも重点が置かれつつあります。
まとめ:感情ではなく「長期の国益」で考える視点
25%の関税と利益の海外流出、どちらが良いかという問いに対しては、単純な損得では語れません。重要なのは、経済全体の持続的な成長や雇用・所得の増加につながる政策かどうかという視点です。
短期的な怒りや不公平感だけでなく、国際経済の現実と日本の成長戦略を踏まえたうえでの議論が求められます。感情を起点にしつつも、合理的な判断へとつなげていく姿勢が大切です。

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