近年、ネット証券の普及とともに、ID・パスワードの漏洩や不正アクセスによる「証券口座の乗っ取り」被害が報告されています。もし、自分の知らないうちに他人が口座に不正ログインし、株式を購入していた場合、その株の“所有者”は誰になるのでしょうか?本記事では、法的な観点や実務上の対応を踏まえ、この疑問にお答えします。
不正取引で購入された株の名義は誰のものか?
結論から言えば、証券口座を通じて取引が実行された株式は、形式的にはその口座の名義人の保有資産として記録されます。すなわち、たとえ乗っ取りによる不正な購入であっても、証券会社のシステム上は「所有者=口座名義人」となります。
これは、証券会社の顧客資産管理が「口座単位」でなされており、取引の正当性を一義的に確認できる仕組みが整っていないためです。
本人の意思に反した取引は法的にどう扱われる?
本人の意思によらない取引は、民法上の「意思表示の欠缺」として無効主張が可能とされます。具体的には、以下のような法的根拠が考えられます。
- 民法第95条(錯誤)
- 民法第96条(詐欺・強迫)
- 不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)
つまり、不正アクセスによって第三者が勝手に発注した注文は、名義人の“承諾なき行為”であるため、本来は本人に責任を帰すべきものではありません。
証券会社や警察への連絡と初期対応
もし口座乗っ取りの被害に遭った場合は、速やかに次の対応を取ることが重要です。
- 証券会社に連絡し、不正取引の停止・調査依頼
- 警察への被害届の提出(サイバー犯罪相談窓口)
- 金融庁や日本証券業協会への相談
- 口座のパスワードや認証情報の即時変更
証券会社によっては「不正取引補償制度」が整備されており、調査の結果に基づいて資産の回復や損失補填が行われる場合もあります。ただし、名義人の過失(パスワード管理の不備など)が重く問われると、補償されないこともあります。
不正に購入された株は「売ってしまっていい」のか?
不正取引により保有された株式であっても、本人が処分(売却)を行えば、それは“承認”と解釈される可能性があります。特に、売却後に価格が変動し利益が出た場合、「その利益は本人のものとして受容した」と見なされ、後にトラブルになるケースも。
勝手に売却するのではなく、まずは証券会社の指示を仰ぐことが重要です。
実際の被害事例と判例の傾向
過去には、FX取引や仮想通貨取引において不正ログインされたユーザーが証券会社と訴訟になった例もあり、「過失割合」によって損失補償の有無が判断される傾向があります。
たとえば、簡単なパスワードを使っていた、フィッシングサイトに情報を入力してしまった、といった行為は「本人にも過失があった」として補償の対象外となることがあります。
まとめ:形式上は口座名義人の資産でも、法的には無効主張が可能
証券口座が乗っ取られ、勝手に株を購入された場合でも、その株はシステム上は名義人の保有となります。しかし、法的には「本人の意思に基づかない取引」として無効を主張することは可能です。
被害を最小限に抑えるには、早期の対応・証拠保存・関係機関への相談が不可欠です。パスワードや2段階認証など、日常的なセキュリティ対策を徹底することも、資産を守る第一歩となります。

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