近年注目を集める現代貨幣理論(Modern Monetary Theory=MMT)は、従来の経済学とは異なるアプローチで貨幣や財政政策を捉えています。その中で、「貨幣の実質価値は何によって決まるのか?」という疑問が浮かびます。本記事では、MMTの枠組みにおいて貨幣の実質価値がどのように捉えられているのかを、わかりやすく解説します。
MMTの基本的な前提とは?
MMTは「主権通貨(自国通貨)を発行できる国家は財政赤字を気にせずに支出できる」とする理論です。税収に依存せず、政府支出を通じて経済活動を活性化させるという考えが中心です。
この理論では、政府は通貨を発行できる立場にあり、支出に制限を受けるのは「資源の制約(インフレ)」のみであるとされます。つまり、財源の有無よりも、供給能力とインフレの抑制が重視されます。
貨幣の実質価値はどのように決まるのか?
MMTにおいて貨幣の実質的な価値は、政府による課税の強制力に根ざしています。すなわち、政府が「この通貨で税金を納めよ」と命じることで、その通貨には価値が生じます。
実例として、アメリカ政府がドル建てで納税を義務付けることで、企業も個人もドルを必要とし、それによりドルの価値が社会的に保証されるというわけです。
MMTにおける「価値の維持」とはインフレ管理である
MMTでは、貨幣の価値は名目額ではなく、「何が買えるか=購買力」で定義されます。そのため、価値の維持にはインフレ管理が中核を占めます。
過度な財政支出によるインフレを防ぐため、MMTは税金や国債の発行を“貨幣供給の調整手段”として活用すべきとしています。ここが、従来の「税収→支出」という因果関係とは逆転している点です。
MMTと従来理論の違いを事例で比較
従来理論:政府は税収が足りないとき、国債を発行し、市場から借金する。結果として財政赤字や金利上昇が問題視される。
MMT:政府はまず支出し、必要に応じて税や国債を調整手段として用いる。金利は中央銀行が政策的に管理するもので、民間借入と競合する必要はない。
この考えにより、公共投資や雇用創出に積極的な政策を正当化できますが、インフレ管理の失敗=貨幣の実質価値の毀損につながるリスクも抱えています。
実質価値に対する批判と現実的な課題
批判者は、「インフレの予測と制御は容易ではなく、MMTの枠組みでは暴走リスクが高まる」と指摘します。特に政治的なプレッシャーにより、支出拡大が続くと通貨の信認が失われ、実質価値が下がる可能性があります。
このため、MMTを採用するには高度な財政運営能力と、インフレ抑制への制度的コミットメントが不可欠です。
まとめ:MMTにおける貨幣価値の核心は「課税とインフレ管理」
MMTでは、貨幣の実質価値は「税による需要」と「インフレの管理」によって成立します。これは従来の“市場の信用”や“金との兌換”といったアプローチとは異なる現代的な枠組みです。
理論としての革新性は高い一方、実践には制度設計と透明性が求められます。通貨価値の本質に迫る視点として、MMTは今後も議論の中心にあり続けるでしょう。

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