原油先物価格が下落しているにもかかわらず、ガソリン価格はなかなか下がらない——これは多くのドライバーや家庭にとって気になる疑問でしょう。WTI原油が1バレル60ドル前後に落ち着いている今、なぜガソリン価格は160円/Lを超える水準で推移しているのでしょうか。本記事ではその要因を経済の視点から解説します。
原油価格とガソリン価格は連動しないのか?
一見すると、原油価格が下がればガソリンもすぐに安くなるように思えます。しかし、実際には原油価格の下落が小売価格に反映されるまでには時間差と構造的な要因が存在します。さらに、精製・流通・税制など多くの段階を経ているため、必ずしも単純には連動しません。
実例として、2023年にWTIが80ドルから60ドルに下落した際でも、都市部ではガソリン価格が150円台からほとんど動かず、地方ではむしろ上昇した地域もありました。
ガソリン価格に影響する主な要因
- 精製コストと設備維持費:原油をガソリンに変えるには精製所が必要で、これには高額な維持コストがかかります。原油価格が下がっても、これらの固定費は変わりません。
- 税金の割合:日本のガソリン価格のうち、およそ40~50%は税金(揮発油税・地方揮発油税・消費税)です。原油が安くなっても、この部分は変動しないため価格は下がりにくいのです。
- 在庫調整ラグ:スタンドが販売するガソリンは過去に高値で仕入れたものの場合があります。価格をすぐに下げると赤字になるため、下落の反映は遅れます。
- 流通と小売マージン:石油元売り、運送業者、ガソリンスタンドそれぞれに利益が必要です。競争が緩い地域では高止まりしやすくなります。
為替の影響は限定的になっている?
原油は主にドル建てで取引されているため、ドル円相場も重要な要素の一つです。ただし、2024年時点でのドル円レートが安定していても、為替リスクヘッジや円安基調が長く続いたことによるコスト転嫁が継続している可能性があります。
また、為替が落ち着いていても、その効果が市場全体に及ぶには時間がかかります。為替の変動は“直ちに”小売価格に反映されるわけではない点も理解しておきたいところです。
地域差や政策の影響
ガソリン価格には地域差も大きく影響します。都市部では競争が激しく価格が下がりやすい一方、地方ではスタンドの数が限られ、価格競争が少ないため高止まりする傾向があります。
加えて、国や自治体による補助金(価格抑制策)が終了した場合、価格が反発して高止まりすることもあります。たとえば、政府のガソリン補助金が段階的に縮小されると、それに連動して価格が上がることが過去にもありました。
まとめ:価格が下がらないのは複合的な理由による
原油価格が下がってもガソリン価格がすぐに下がらないのは、精製・税金・在庫・流通・地域差・為替といった複数の要因が複雑に絡み合っているからです。価格が上がる時は早く、下がる時は遅いという“粘着性”もこの業界の特徴の一つです。今後も価格の動向を見守る際には、単にWTI価格だけでなく、より広い視点での情報収集が重要になります。

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