日本の半導体新興企業「ラピダス」がIBMと提携し、次世代の2nm(ナノメートル)半導体の開発に取り組んでいることが注目を集めています。しかし、多くの人が疑問に思うのが「なぜIBMは自社の最先端技術を、外部企業であるラピダスに共有するのか?」という点です。本記事では、両社にとってのメリットや背景をわかりやすく解説します。
IBMが2nm技術を保有している理由と戦略的立場
IBMはかつて自社で半導体製造を行っていましたが、現在では設計・研究開発に特化し、製造は外部委託するファブレス企業となっています。2021年には世界で初めて2nm技術の試作チップを公開し、半導体技術のリーダーシップを維持しています。
ただし、IBM自身は大規模な量産体制を持っておらず、革新的な設計技術を商業的に展開するには製造パートナーの存在が不可欠なのです。
ラピダスとの連携におけるIBM側のメリット
IBMにとって、ラピダスと連携することには複数の戦略的メリットがあります。
- 量産実績の獲得:ラピダスが商用生産に成功すれば、IBMの技術が世界市場で標準として採用されやすくなります。
- エコシステムの構築:IBMの技術をベースにした半導体製造ネットワークが広がれば、ソフトウェアやサービス分野にも波及します。
- 政府との連携強化:日本政府がラピダスを支援していることもあり、国家レベルの技術協力にIBMが関与できる点は地政学的にも重要です。
このように、技術の「囲い込み」ではなく「普及による影響力の拡大」を狙うのがIBMの戦略です。
ラピダスが求める技術移転と人材育成
ラピダス側にとっても、最先端の2nm技術を一から独自に開発するのは非現実的です。そのため、IBMのR&D施設に技術者を派遣し、プロセス技術やEUVリソグラフィーの実践的なノウハウを学ぶことは極めて合理的な選択です。
これは単なる「技術の受け渡し」ではなく、「人材育成を通じた共創モデル」であり、将来的にラピダスが自立した先端製造を担うための布石とも言えます。
実例で見る国際的な技術協力のモデル
過去には、台湾TSMCが米国や欧州の企業と密接に連携して成長してきた経緯があります。たとえば、TSMCはIBMやARM、ASMLなどの技術パートナーから支援を受け、今日の世界最大ファウンドリ企業へと成長しました。
ラピダスとIBMの関係もこれに近く、先端技術と製造能力のシナジーを目指す、国際協力型のイノベーションモデルと位置づけられます。
地政学リスクとサプライチェーン多様化の背景
米中対立や台湾有事など、半導体サプライチェーンに関する地政学的リスクが高まる中、IBMとしても「米国以外の信頼できる製造拠点」を必要としているのが現実です。
この点で、日本の技術力・法制度の安定性・政府支援の手厚さを持つラピダスとの連携は、IBMにとってリスク分散と供給安定化の一環でもあるのです。
まとめ:技術の共有は相互利益の上に成り立つ
一見すると、IBMが2nmのキーテクノロジーを他社に渡すことに驚くかもしれません。しかし、現代の半導体開発は単独では進められないほど複雑化しており、協業によってこそグローバル競争に勝てる時代です。
IBMとラピダスの連携は、その象徴的なモデルであり、今後の半導体産業の方向性を示すものとして注目されるべき事例です。

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