国民経済計算において、GDP(国内総生産)やGNI(国民総所得)からNI(国民所得)を導くには、いくつかの重要な調整が必要です。特に「固定資本減耗」や「間接税」、「補助金」などの加減は、単なる計算上の手続きではなく、経済の実態を正確に捉えるために不可欠なステップです。
GDP・GNIとNIの違いとは
まず、GDPは国内で生産されたすべての付加価値の合計を示します。GNIはGDPに「海外からの純所得(要素所得の受取−支払)」を加えたものです。つまり、GNIは「国民が得た所得」に近づいた指標ですが、それでも完全な「可処分的所得」ではありません。
NI(国民所得)は、実際に国民のもとに分配された所得、つまり企業の利益や家計の給与などの合計を示します。そのため、分配の実態に合わせた調整が必要になります。
固定資本減耗を控除する理由
固定資本減耗(depreciation)は、機械や建物などの固定資本が生産過程で劣化・減価することを意味します。GDPやGNIにはこの分が含まれていますが、実際に所得として消費や投資に回せるわけではありません。
したがって、NIを計算する際には、実際に使える所得だけをカウントするため、固定資本減耗分を差し引く必要があります。これにより、「純」所得を把握できます。
間接税と補助金の調整理由
間接税(消費税や酒税など)は企業が政府に納める税であり、価格に上乗せされて支払われます。これらは実際には企業や家計の所得ではなく、政府の取り分です。したがって、企業の生産活動による真の所得とは言えません。
反対に、政府から支払われる補助金は企業の所得を増やす要素であるため、間接税を控除し、補助金を加算することで、より正確な分配ベースの所得(NI)に近づけます。
具体的な計算式の流れ
以下は、GNIからNIを導く基本式です。
- GNI − 固定資本減耗 − 間接税 + 補助金 = NI
この計算によって、見かけの大きな所得ではなく、実際に国民に分配される純粋な所得を把握できるようになります。
実例:簡単な数値でシミュレーション
仮にGNIが600兆円、固定資本減耗が50兆円、間接税が40兆円、補助金が10兆円あったとします。このとき。
NI = 600 − 50 − 40 + 10 = 520兆円
このように、50兆円分は資本の補修や更新に使われ、40兆円は政府に渡り、10兆円は政府から補助されているという構造になります。
なぜこの調整が重要なのか
国の政策や景気判断、社会保障の設計において、「実際に国民に届く所得(NI)」が重要な指標となります。税や投資の計画も、可処分所得や企業の実収益に基づいて行われるため、経済分析や政策立案には不可欠な指標です。
まとめ:NIは「使える所得」の実態を映す指標
GDPやGNIは経済全体の大きさや取引の総量を示しますが、NIはより生活に近い「誰がどれだけ受け取っているか」という分配の実態を示します。そのため、固定資本減耗・間接税・補助金といった要素を丁寧に調整することが求められています。

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