2018年以降、トランプ前大統領が主導した相互関税政策(報復関税)は、世界経済と米国経済に多大な影響を与えました。こうした関税措置が、GDPの算出上どのように取り扱われるのかについて解説します。
関税とGDPの関係:基礎的な理解
GDP(国内総生産)は、消費+投資+政府支出+純輸出(輸出-輸入)という式で構成されています。相互関税はこのうち「輸出」「輸入」の項目に直接影響を与える政策です。
たとえば、アメリカが外国からの輸入品に関税をかけると、輸入額が減少する可能性があり、その分「純輸出」が増加してGDPが押し上げられる形になります。ただし、これは表面的な効果に過ぎません。
関税が消費者と企業に与える実質的な影響
関税により外国製品の価格が上昇すると、アメリカ国内の企業や消費者は高いコストを負担することになります。これが実質消費や設備投資の減少を招き、GDPにマイナスの効果を与えることも多いです。
特にサプライチェーンに組み込まれている中間財(例:機械部品、原材料)に関税が課されると、製造コストの増加 → 価格転嫁 → 需要減という悪循環が生じ、GDP全体に負の圧力をかけることがあります。
報復関税による輸出減の影響
相手国が報復措置として米国製品に関税をかけた場合、アメリカの輸出は減少します。これはGDP計算式の「輸出」項目に直接マイナスの効果を与えるため、GDP全体を下押しする要因になります。
実際にトランプ政権期、中国との貿易戦争が激化した結果、農産物を中心に米国の対中輸出は大きく減少しました。このため、関税政策がGDPに与える正負の影響は、状況によって大きく変わるのです。
会計処理としての関税収入の扱い
関税は政府にとっての歳入であり、「政府支出」の側面ではないためGDPに直接加算はされません。ただし、政府が関税収入を使ってインフラ投資や経済支援に充てた場合は、政府支出が増加し、それがGDPに寄与する可能性があります。
つまり、関税収入は間接的にGDPを押し上げる可能性を持つが、それは政策運用次第ということになります。
経済学者による評価と実例
多くの経済学者は、関税政策によってGDPが短期的に押し上げられることがあっても、中長期的には消費や投資の抑制によるマイナス効果が大きいと指摘しています。実際、全米経済研究所(NBER)のレポートでは、米中貿易摩擦が米国GDPを0.3%~0.5%押し下げたと推定されています。
農業補助金の増額や、製造業保護政策による「部分的な救済」はありましたが、経済全体への波及効果としては限定的だったと評価されています。
まとめ:相互関税はGDPに複雑な影響を与える
トランプ政権の相互関税は、GDPに対して短期的な押し上げ効果を持つことがありますが、輸出減や消費・投資の停滞など負の影響も大きく、必ずしも成長に結びつくとは限りません。関税は「数字」以上に国際関係や市場心理にも影響を与える政策であるため、経済全体を見通す分析が求められます。

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