2008年のリーマンショック以降、アメリカ経済は回復と成長を見せてきた一方で、地域間の格差、とくに東西沿岸部と中西部(いわゆる“フライオーバー・ステイツ”)の間にある所得のギャップは今なお残り続けています。本記事では、リーマンショック後の経済構造の変化と、それに伴う地域格差の持続要因を解説します。
リーマンショックの影響が地域経済に与えた分断
リーマンショックは全米に大きな金融的打撃を与えましたが、その影響と回復のスピードは地域によって大きく異なりました。特にニューヨークやシリコンバレーなどの金融・テクノロジー中心の都市部は、早期に景気回復の波に乗りました。
一方、製造業が主要産業である中西部や南部の地域は、長期的な構造転換に直面し、雇用や所得の回復が遅れたままとなっています。特にインディアナ州、オハイオ州、ミシガン州などのラストベルト(Rust Belt)と呼ばれる地域では、工場閉鎖と人口流出が続いています。
テクノロジーと金融の“集中”が格差を助長
近年の経済成長は、シアトル、サンフランシスコ、ニューヨーク、ボストンといった都市圏に集中しています。これらの都市にはハイテク企業、スタートアップ、ベンチャーキャピタル、グローバル金融機関が集積しており、高所得者層の集中と地価・物価の高騰を招いています。
たとえば、サンフランシスコではソフトウェアエンジニアの平均年収が15万ドルを超えた一方、ミズーリ州では6万ドル台にとどまっています。このような構造的所得格差が、地理的な分断を生み続けているのです。
都市部と地方部で異なる雇用の“質”
所得格差の背景には、労働市場の構造の違いがあります。沿岸部ではIT・医療・バイオなどの専門職が増加傾向にあるのに対し、中西部では物流・小売・倉庫作業など、低賃金かつ非正規雇用が中心になっています。
さらにリモートワークの拡大により、都市部の高スキル労働者が地方に移住するケースも出ていますが、それは“都市部の人材が地方で豊かに暮らす”形であり、地方全体の経済底上げにはつながっていないという指摘もあります。
政治と経済政策の地域格差への対応
連邦政府や一部州政府は地域格差の是正に向けた政策を試みています。たとえば、バイデン政権下では「インフラ投資・雇用法」などを通じて、地方のブロードバンド整備や再生可能エネルギー関連の投資が進められました。
しかし、これらの政策の波及効果は限定的であり、数十年にわたる構造格差を短期間で解消するのは困難とされています。
実例:格差が可視化されたデータとトレンド
米国勢調査局のデータによれば、2022年時点でワシントンD.C.やカリフォルニアの平均世帯収入は9万ドルを超える一方、ミシシッピ州やウェストバージニア州では4万ドル台と、約2倍の開きがある状態です。
また、住宅価格指数でも、沿岸部は2008年以降に大幅な回復と上昇を遂げたのに対し、内陸部では回復が鈍く、資産の増加による格差拡大も進んでいます。
まとめ:リーマンショックは“きっかけ”であり、格差は“構造”に根ざしている
アメリカの地域格差はリーマンショックで拡大しましたが、問題の本質はそれ以前からあった経済構造の変化にあります。
沿岸部と中部の所得格差は今なお続き、むしろテクノロジーと資本の集中により深刻化している側面も見逃せません。
一時的な景気対策だけでなく、教育・インフラ・産業育成といった長期的視点が求められています。

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