これまで地政学リスクや経済危機の際には“有事のドル買い”が通説とされてきました。しかし近年の相場では、必ずしもドルが買われるとは限らないケースが目立っています。今回はその理由と背景をわかりやすく解説します。
「有事のドル買い」とはどういう現象か?
有事のドル買いとは、戦争・テロ・経済危機などの不測の事態(有事)が発生したとき、世界中の投資家が安全資産として米ドルを買う傾向のことを指します。
特にリーマンショック時や湾岸戦争、2001年の同時多発テロの際などに顕著に見られた現象です。
最近の地政学リスクでドルが買われない理由
2024年~2025年にかけてのウクライナ紛争や中東情勢など、有事に該当する事例は複数ありましたが、ドル買いが起きない(または限定的)理由には以下のような要因があります。
- 米経済の先行き不透明感:FRBの利下げ観測や景気減速懸念が強く、ドルの魅力がやや低下。
- 米国債の信認不安:財政赤字拡大や格下げリスクなどで、米国債の“安全資産”としての地位が揺らいでいる。
- 他の避難先の存在:円やスイスフラン、金などに資金が分散されており、ドルが一極集中されにくくなっている。
例:イスラエルとイランの緊張がドル買いに繋がらなかった背景
2025年6月に報道されたイスラエルによるイラン施設攻撃の場面では、当初こそ円や金が買われた一方で、ドルは売られる場面も見られました。
これは「事態が拡大しない」との観測や、すでに市場が織り込んでいたこと、そして米国内のインフレや利下げ観測が重なっていたことが理由です。
米国自体がリスク要因と見なされている現実
以前は「米国=安定」の図式が成り立っていましたが、昨今は政治分断・債務上限問題・FRB政策の迷走などが逆にリスク要因と見なされることもあります。
そのため、リスク回避局面でドルが売られ、むしろ円やユーロ、金へと逃避される動きが加速しています。
“ドル売り有事”の時代にどう備えるか
投資家・トレーダーは「有事だからドルが買われる」という固定観念を捨て、状況ごとにリスク資産と安全資産の見直しが必要です。
たとえばリスク回避局面でのゴールドやスイスフランの動き、長期金利の変動、FRBの声明内容なども総合的に見て判断することが求められます。
まとめ:現代の有事では“ドル買い”とは限らない
今の相場では、「有事=ドル買い」ではなく「有事=リスク分散」の時代になっています。
- 米ドルは引き続き重要な通貨だが、万能の“安全通貨”ではない
- インフレ・金利・米国の政治要因がドル売りの材料にもなる
- リスク回避資金は円・フラン・金など多様化している
今後の市場では、単純なルールではなく、柔軟で複合的な視点で相場を見ることが重要です。

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