国債を発行して給付金を配るという政策の是非:MMT理論と日本の財政を読み解く

経済、景気

近年、一部の政治家が「国債を発行し国民に毎月10万円給付するべきだ」と主張して話題になっています。このような政策は経済学的にはMMT(現代貨幣理論)を背景にして語られることが多く、賛否両論を呼んでいます。本記事では、国債発行の意味やリスク、MMTの考え方をわかりやすく解説します。

国債を発行して給付金を配るとはどういうことか

国債とは、政府が発行する借金です。国が財源不足を補うために発行し、それを国内外の投資家や金融機関が購入します。給付金を国民に配る財源をこの国債でまかなう、というのが一部の主張です。

具体的には、政府が国債を大量に発行し、その資金を国民一人あたり月10万円の現金給付として支給し続けるという政策構想になります。

MMT(現代貨幣理論)とは

MMTはModern Monetary Theory(現代貨幣理論)の略で、主にアメリカなどで議論されてきた経済学の理論です。この理論では、自国通貨を発行できる政府は財政赤字をあまり気にせず、インフレを制御しながら通貨発行によって景気を支えることができるとされています。

MMTでは「財源がないから支出できない」という発想を否定し、インフレにならない限り国債を発行して財政支出を拡大することができると主張します。

この政策のメリット

・不況時に景気刺激策として有効
・生活に困窮する層の救済
・消費の拡大による経済活性化

特にコロナ禍では、アメリカのように現金給付が行われた例もあり、一定の効果があったと評価されています。

想定されるリスクと批判

最大のリスクはインフレです。通貨を発行しすぎると物価が急騰し、国民の生活がむしろ苦しくなる可能性があります。

また、国債残高が膨れ上がれば信用リスクが高まり、金利の上昇や通貨価値の下落(円安)を招くおそれがあります。国債が返済不能だと見なされれば、国内外からの信頼を失い、経済は混乱する可能性があります。

「国債は返さなくていい」は本当か?

MMTでは「政府が発行する国債は自国通貨建てである限り理論上デフォルト(債務不履行)にはならない」とされます。しかし、これはあくまで理論上の話であり、現実にはマーケットの信頼を失えば金利の急上昇や通貨暴落の危険があります。

「返さなくていい」ではなく、「返す必要があるが、自国通貨建てであれば技術的には返済可能」というニュアンスが正確です。

他国の事例:ジンバブエやアルゼンチン

自国通貨を無制限に発行してハイパーインフレに陥った国の例として、ジンバブエやアルゼンチンがあります。これらの国では通貨の信頼が完全に崩れ、深刻な経済危機に陥りました。

日本はこれらとは状況が異なるものの、通貨信認の喪失がもたらす影響は決して無視できません。

まとめ:冷静な制度設計と議論が必要

国債を発行して給付金を配るというアイデアは、国民の生活を守るための一つの選択肢ではあります。しかし、それにはインフレや信用低下というリスクが伴い、無制限に実行できるわけではありません。

大胆な政策には冷静な議論と慎重な制度設計が欠かせません。感情論ではなく、経済理論やデータに基づく判断が求められています。

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