金融商品を販売する際の条件付きオファーは、顧客にとって魅力的に映る一方で、金融商品取引法や関連ガイドラインの観点から法的な問題を孕む場合があります。特に「永久劣後債を100円で買い取る」という条件で他の債券を販売する行為が、「特別の利益の提供」に該当するのかどうかは、金融機関や証券会社の販売手法を左右する重要な論点です。
「特別の利益の提供」とは何か?
金融商品販売業者は、金融商品取引法や金融庁のガイドラインに基づき、「顧客に対し、販売とは直接関係のない不当な利益を提供すること」を禁じられています。これが、いわゆる「特別の利益の提供」に該当する行為です。
例えば、金融商品の購入に対して景品や金銭を提供すること、または合理的な経済的理由がない価格設定で別の商品を絡める場合などが挙げられます。
永久劣後債とは?
永久劣後債とは、償還期限が定められておらず、企業が破綻した場合に返済順位が低い(=劣後する)債券です。高利回りである一方、元本毀損のリスクもあります。
このようなリスク資産を「100円で買い取る」ことを条件に別の債券を販売する場合、その買取価格が市場価格より著しく高いと、それ自体が「特別の利益」とみなされる可能性があるのです。
実際に問題となるケースの具体例
例:ある顧客が市場価格70円の永久劣後債を保有しており、証券会社が「その債券を100円で買い取る代わりに、新たに劣後でない社債を1,000万円分購入してください」と勧誘したとします。この場合、市場価格との差額30円分の金銭的恩恵が発生し、これが「特別の利益」と評価されるリスクが出てきます。
金融庁や証券取引等監視委員会が問題視するのは、このような利益が取引の公正性を損なうかどうか、または他の投資家との公平性を欠くかどうかです。
金融庁のガイドラインと判例の視点
金融庁は「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の中で、不適切な勧誘手法を厳しく取り締まっています。過去には、類似のスキームで行政処分が下された例もあります。
また、顧客の誤認を招くような形でリスク商品と安全資産の入替えを誘導した場合、説明義務違反や適合性原則違反にも発展するリスクがあります。
合法にするための注意点とは?
このような販売スキームが法的に問題とならないためには、以下のポイントに留意する必要があります。
- 買取価格の合理性を説明できる資料・根拠を持つ
- 両商品のリスクとリターンを正確に比較して説明する
- 顧客に選択の自由を確保し、強制性を持たせない
- 金銭的利益の提供と捉えられないような構造にする
また、社内のコンプライアンス部門と事前に相談し、文書でリスク評価を行っておくことが望ましいでしょう。
まとめ:利益提供に見える構造は慎重に判断を
「永久劣後債を100円で買い取る代わりに別の債券を販売する」という提案は、構造によっては「特別の利益の提供」として法的問題を引き起こすおそれがあります。金融商品販売に携わる立場であれば、見た目のサービスではなく、その経済的実質と法的妥当性を常に検証することが必要です。
金融庁の方針や過去の事例をもとに、慎重かつ適正な勧誘・販売を心がけましょう。

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