ポートフォリオ理論におけるリスクの正体:標準偏差と分散効果の基礎知識

資産運用、投資信託、NISA

資産運用の基本に「リスクを抑えつつリターンを最大化する」という考え方があります。その中核をなすのが「ポートフォリオ理論」です。特にFP(ファイナンシャル・プランナー)の試験などでは、「ポートフォリオのリスクは加重平均より小さくなる」といった表現が頻出します。今回は、この“リスク”が何を意味しているのか、なぜ加重平均より小さくなるのかをわかりやすく解説します。

ここでいう「リスク」は標準偏差のこと

ポートフォリオ理論においてリスクとは、資産価格の変動幅を数値化した「標準偏差(Standard Deviation)」を指します。これは、ある資産が平均リターンからどれくらいブレる可能性があるかを示す統計指標です。

たとえば、ある株式Aの年間リターンが平均5%で標準偏差が10%なら、そのリターンは大きく上下する可能性があることを意味します。標準偏差が大きければリスクが高く、小さければリスクは低いと考えます。

加重平均より小さくなる理由は「分散効果」

異なる動きをする複数の資産を組み合わせることで、リスクを抑える効果が生まれます。これが「分散効果(diversification)」です。異なる資産が同時に下がることは少ないため、全体としてのブレ(標準偏差)は小さくなります。

たとえば、株式と債券を組み合わせたポートフォリオでは、株が下がる時に債券が上がるといった逆の動きをすることがあり、結果として全体の価格変動が抑えられます。

ポートフォリオのリスク計算式(参考)

2資産のポートフォリオの標準偏差(σp)は以下の式で求められます。

σp = √(w₁²σ₁² + w₂²σ₂² + 2w₁w₂σ₁σ₂ρ)

ここで、
w₁, w₂:資産1と2の投資比率
σ₁, σ₂:資産1と2の標準偏差
ρ:2資産の相関係数

相関係数が1未満であれば、ポートフォリオ全体のリスク(標準偏差)は単純な加重平均よりも小さくなります。

リスクを下げる実例:株式+債券

例えば、株式だけに投資すると標準偏差は約20%、債券だけなら約5%と仮定しましょう。この2つを半々(50%ずつ)で保有した場合、単純な加重平均では標準偏差は12.5%になります。しかし、実際にはそれよりも小さくなることが多いのです。なぜなら、株と債券の値動きには負の相関がある場合が多く、リスクが相殺されるからです。

この「加重平均より小さくなる」という現象が分散投資のメリットです。

標準偏差以外のリスク指標との違い

「リスク」という言葉には複数の意味があり、FP試験では「分散」や「VaR(バリュー・アット・リスク)」といった別のリスク指標も出題されることがあります。ただし、ポートフォリオのリスクに関する文脈ではほぼ間違いなく「標準偏差」を意味します。

混乱を避けるためには、問題文に注目し「価格変動」「ブレ」「ボラティリティ」といったキーワードが出てきたら、標準偏差を意味していると考えて良いでしょう。

まとめ:分散投資の本質を理解しよう

ポートフォリオ理論においてリスクは「標準偏差」であり、複数の資産を組み合わせることで単純な加重平均よりも小さなリスクになる「分散効果」が得られます。FP試験でも、実務でも非常に重要な考え方なので、ぜひこの機会にしっかりと理解しておきましょう。

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