企業の利益の一部が株主に分配される「配当」は、投資家にとって重要なリターンの一つです。しかし、「配当額に法律上の上限があるのでは?」といった疑問を持つ方も少なくありません。特に授業や講義などで「配当は10%まで」といった説明を受けたことがある方は、その真偽について気になるのではないでしょうか。この記事では、株主配当に関する法律的な制限や、会社法の観点からの配当原資のルールについてわかりやすく解説します。
配当の上限は法律で定められているのか?
結論から言うと、日本の会社法において株主配当の「割合」自体に直接的な上限規定は存在しません。つまり「配当金は資本金の10%以内にしなければならない」といったような、割合ベースの法定上限は設けられていないのです。
ただし、配当を行う際には会社法第461条などに基づき、分配可能額や純資産額の減少に関するルールが細かく定められており、自由にいくらでも配当できるわけではありません。
配当を出すために必要な「分配可能額」とは
会社法においては、配当を出すためには「分配可能額」という考え方が用いられます。これは、企業の純資産のうち、配当に回しても会社の健全性に影響しない範囲の金額を意味します。
たとえば、前期までの利益剰余金が10億円あるとしても、繰越欠損金がある、資本金の減少が発生している、などの状況では分配可能額が限定され、実際に出せる配当金は少額になることがあります。
10%ルールはどこから来た?誤解されやすい考え方
「配当は10%まで」という話は、おそらく旧商法時代や、内部留保を一定比率以上確保するという財務的な保守主義から生まれた慣習的な目安に過ぎません。特に法律ではなく、企業会計基準や取締役会の判断で「配当性向(利益のうち何%を配当するか)」を自主的に10%程度に設定している企業も少なくないため、それがあたかも法律のように広まったと考えられます。
実際には、配当性向が50%を超える企業もあり、業界や財務状況に応じて大きく異なります。
配当の決定プロセスと会社法の関係
株式会社において配当を決定するには、通常は株主総会の決議が必要です(会社法第454条)。ただし、公開会社で定款に定めがある場合は、取締役会決議による「中間配当」や「期末配当」も可能です。
いずれにしても、会社法のルールに基づき、配当によって自己資本を大きく毀損するような事態を防ぐための仕組みが整えられています。
実際の配当の上限は企業次第?具体例で見る
たとえば、ある上場企業の配当性向が70%であっても、それが分配可能額の範囲内であれば違法ではありません。逆に、利益剰余金が潤沢にあっても、将来の投資に備えて配当を絞る企業もあります。
JPX(日本取引所グループ)などのIR資料を見ると、各企業の配当政策の違いが明確に分かります。
まとめ:配当の「10%制限」は誤解、実際は会社法に基づく健全な財務判断がカギ
株主配当に法律上の「率」の制限はなく、会社法が求めるのはあくまで健全な財務基盤を前提とした分配です。「10%」という数字は制度ではなく、企業の自主判断や会計基準の目安といえるでしょう。
配当の仕組みを正しく理解することで、投資判断や企業分析にも活かすことができます。法的根拠に関しては、会社法第461条・454条などが重要な条文ですので、確認しておくと安心です。

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