経済政策の中で金融政策は極めて重要な役割を果たします。特にマネーサプライ(貨幣供給量)の操作は、国内の金利や為替レートに大きな影響を与える要因です。本記事では、物価が一定である短期的な前提のもと、拡張的金融政策によってマネーサプライが増加した場合に、貨幣市場と外国為替市場がどのように変化し、どのような均衡がもたらされるかをわかりやすく解説します。
拡張的金融政策とは何か?
拡張的金融政策とは、中央銀行が市場に資金を供給し、マネーサプライを増やすことで、経済活動を刺激しようとする政策です。具体的には、公開市場操作(国債の買いオペレーション)や政策金利の引き下げが手段として用いられます。
この結果、貨幣市場では供給曲線が右方にシフトし、金利が低下します。名目利子率の低下は、投資や消費を刺激し、実体経済を押し上げる効果が期待されます。
貨幣市場の変化とその均衡
貨幣市場(LM曲線)において、貨幣供給量の増加は縦軸の名目金利を引き下げ、実質貨幣供給量(M/P)が増加します。
図で示すと、縦軸が金利、横軸が実質貨幣量で、供給曲線が右にシフトし、新しい均衡点で金利が下がります。
この金利低下が次の為替市場への影響を及ぼします。
外国為替市場への波及効果
国内金利が下がると、投資家はより高い利回りを求めて外貨建て資産へシフトします。これにより円売り・外貨買いが進み、円安が進行します。
外国為替市場における均衡は、IS-LM-BP(マンデル=フレミングモデル)で説明され、資本移動が自由な経済では、拡張的金融政策により円安が進行し、輸出が増え経済活動が拡大するという流れになります。
一時的 vs 恒久的な金融政策の違い
ここで重要なのは、一時的なマネーサプライの増加と恒久的な増加の違いです。
- 一時的:市場参加者は「すぐに戻る」と予測し、期待インフレ率や為替レートへの影響は限定的。円安効果も一過性。
- 恒久的:将来にわたりマネーサプライが増え続けると予想されると、通貨の信認が低下し、急激な円安と資本流出を引き起こす可能性があります。
例えば、アベノミクス初期の日本では、量的・質的金融緩和(QQE)によって長期にわたるマネーサプライの拡大が明確にされ、急激な円安が進みました。
政策効果のまとめ:短期均衡と長期の含意
短期では、拡張的金融政策は金利低下 → 為替レートの減価(円安) → 輸出増加 → GDP増加という流れで経済を刺激します。
しかし長期的には、過度なマネーサプライ拡大はインフレリスクや通貨価値の下落を招くため、慎重な運用が求められます。
まとめ:金融政策の持続性と市場の信認がカギ
拡張的金融政策がもたらす効果は、マネーサプライの増加が一時的か恒久的かに大きく左右されます。短期的には円安と景気刺激という効果が期待できますが、恒久的だと通貨の信頼性が揺らぐ可能性もあります。
金融政策は市場の期待形成に密接に関わっており、政策の「継続性」と「信頼性」が最終的な均衡に大きく影響するのです。

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